ジェスカ ラ フィン
会いたい、という感情から彼を呼び.ますのです。彼は心を癒しています。私
はなんでも知っています。彼はノザロッチに殺され、彼の魂はジャングルを彷
徨っておりました。ジャングルと、このパイプが結び合って、私達夫婦に道を
作ったのでした。あなたはバートン君の他にペリンガ君やラロレーン君やウィ
ズウィングル君を亡くしてしまったのでしょう? 私はそれを夢のお告げで知
っています。彼らは生きています。しかし、盗賊団の代わりに、トランプの箱
に入っているのです。祈って下さい。君とウィズウィングル君とペリンガ君は、
ソフサラコマ君が蟻のダンドルズを倒して、ルトワーゼを倒せば、復活する。
ソフサラコマ君、君はどうすればよいのか分かるかね?」
「…僕は、ジョイントの力を磨きつつ、山の麓まで行って、城の裏側に回って、
坑道を通り、建設現場に行ってセネアトレクの完成を阻止する…」
「セネアトレクをぶっ壊しても構わんよ」
ナヌコラーゼはソフサラコマの頭を優しく撫でた。
「左足と右手で作業は止まっている。右手と右足は『農業国ビザジズドー』と
『商業国コラダングス』から既に掘り終わっているらしい。各国の科学者や技
術者を集めてな。足りない部品や破損した部分、復元や再現しなければならな
い箇所などは此処『機械国ルチャーナ』で採れた原材料を使うのだ。鉱山の入
り口の警備は厳重で、また、重装備して行かないと奥まで辿り着くのはキツイ
ので、裏道から入ったほうがいいのです。入り口に油井の並んだ、『ベロメ金
坑』、『ハチャネ銀坑』、『ギギルメ炭坑ルート』、『アンラ銅坑ルート』、
そして『ポルゼ建設現場の洞窟』へと繋がります。危険で長伸の道のりです。
.悟しなさい。エクアクス君は、このパイプに触れてジョイントで煙と、闇の
塊を取り出しなさい。目を閉じなさい、開くと、其処は北の『チャンチャラン
ダ』の島です」
僕はソフサラコマにツーシーターの鍵とジョイントで偽造したソフサラコマ
の写真のついた運転免許証を渡した。
僕が行ってしまった暖炉の家の居間で、ナヌコラーゼがパイプに近づいてソ
フサラコマに言った。
「行ってしまった…」
ソフサラコマはジョイントの透明な光が太陽に反射してパイプの縁を1周し
て消えていくのを見た。ナヌコラーゼの皺くちゃの手がくにゃりと曲がって、
窓を歩いていって、ブラインドを引っ張って閉じた。
「まぁ慌てることはないさ。鉱坑は険しく長い。装備よりも、体にジョイント
を慣れさせて、取り敢えず奥へ進みなさい。ランプは点いていないかもしれな
いが、1日かければきっと建設現場の洞窟に辿り着くだろう」
ナヌコラーゼは椅子に座った。
「僕はエクアクスのいない間に盗賊団の一味を壊滅させればいいんですね。で
も、まだルトワーゼとその、ダンドルズを倒していないけど、僕の父親と母親
のことと、あと、仲間達のことをタイリュー王に聞きたいんだ。エクアクスが
いないのは辛いけど、頑張って行ってみます」
「城の裏の坑道を通り、『ポルゼの建設現場のある洞窟』へと入るのだ。気を
つけて行きなさい。しかし入り口は塞がっている。彼はバートン君を上手く助
けてくれるだろう。盗賊団を合わせて4体倒したジョイントィズウィングル君
達も生き返るだろう。…しかし彼らはきっとそのままの姿では蘇らないだろう。
どういう形で生まれ変わってくるか分からないが、きっと、君のこれからの旅
の手助けをしてくれるだろう。セネアトレクの各パーツを破壊し、研究員達を
助け、建設現場を崩壊させるのだ。そうすれば盗賊団の組織全体も大半は壊滅
するだろう。あとは、残りの盗賊団のメンバーを、各国を回って倒し、リギー
を殺せばタイリュー王から君の知りたいこと全てを聞き出せるかもしれないぞ。
そうすれば、すべてが終わる」
「そうですね! 頑張ります。盗賊団を全て倒せば世界に平和が訪れる!!」
「よろしい! では行きなさい。ここから城まではバスかライトバンに乗って
行きなさい。…敵の気配がするな。城までの交通はもうダメかもしれん。走っ
て奴らの攻撃をくり抜けられるかね? 街から城までは色違いの煉瓦が走って
いる。坂を曲がっていくと山の麓に大きな建設中の城がある。見つからないよ
うに立ち入り禁止のロープをくぐり、裏に回って抗口に入るのだ」
「分かりました」
ソフサラコマはナヌコラーゼの家を出て、住宅街を抜けて町の中心区に向か
った。コートを着て盗賊団特製のチロリアン制.を被り、手っ甲をし、ネッカ
チーフを巻いた狐の盗賊団の手下が5、6匹見張りと待ち伏せをしていた。ソ
フサラコマはジョイントを使って駆けて行き、両手に緑色の光を溜めて、途中
で気がついた手下を吹っ飛ばした。2階建てバスや車が走る中央通に出た。殺
気を感じて上を見上げて見ると、狐の手下がサーベルを持って脳天に突き刺そ
うとしてきた。ソフサラコマはすかさず避けて、攻撃をかわし、構えをとった。
手下は煉瓦の地面からサーベルを抜き取って、黄色の2階建てバスの乗実を見
て真空弾を放って、バスを凹ませて横に向けさせた。対向車線の向こうの歩行
道からは手下の狐が青竜刀と剣を持って走ってきた。車が停止してライトが点
滅し、列が乱れ、対向車線の車は手下共が邪魔し、クラクションが炸裂し、サ
ーベルを振り返すと、2階建てバスの凹みが反対側へ膨らみ、ソフサラコマと
狐の間に片方の車輪を浮かせて、ゆっくり倒れそうになった。ソフサラコマは
ジョイントで緑の火走を飛ばし、バスのサイドの凹みに食い込ませて、持ち上
げた。乗内から悲鳴が消え、体を支え合っていた乗実はざわめいて、平静を取
り戻した。ソフサラコマは混乱を防ぐためにジョイントで足の速さを2倍にし
て、坂のほうへ逃げていった。
手下はしつこくソフサラコマを追いかけてきたが、白く濁った空気のブーメ
ランで、手下共をまとめて縛り上げた。そのまま煉瓦のなだらかな坂を上がっ
ていくと、城の前に洗熊がサーベルを持って立っていた。標的を見つけて唇の
端を上げて白い歯を見せると、サーベルの付属金を鳴らして、構えをとった。
ソフサラコマは両手を後ろに引いて駆け足の音とともに白い手に緑色の光を溜
めて、洗熊達の間を走って蹴散らした。
「居たぞ!!」
空気の縄を解いた狐と兎のコートの連中達がずれた.子を直して走ってきた。
「くっ!!」
ソフサラコマは汗を飛ばして、緑の光を洗熊と坂に伝わらせ液体のように下
りていかせ狐と兎を上に吹き飛ばし、爆発させた。緑色の煙幕の巻いているう
ちにソフサラコマは城の裏に回って、森をくぐり抜け、山肌の表面に鉱坑の入
り口を見つけた。閉鎖してある鉱坑だ。
坑口を、力を込めて開けて、
「まずは『ベロメ金鉱』だ」
とソフサラコマは言った。
中に入ってみると凸凹の壁の表面はコーティングされたように、湿っていて
光っていてランプが無かった。坑道をしばらく行くと、蛾や蝙蝠がたまに飛び、
埃や塵や砂や油で内面が湖沼を液体の上に零したように汚れていて、匂いを発
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史