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ジェスカ ラ フィン

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比べ物になりません。ほとんど全ての品物を此処『ルチャーナ』で作っていま
すから。地下には、落盤や中毒や爆発や噴火事故で亡くなった人達の数万もの
墓場があります。油井の跡などがスラッジに被って腐臭が漂っているらしいで
す」

50階に着いて、歩き出した。ツインの部屋の扉が開いた。ルームキーをチ
ャラチャラと鳴らして、扉が閉まるのを支えてくれた。

部屋の中に入ると、町が1望できた。空は真っ暗になりつつあって、.だに
多くの工場では煙が立ち昇っていた。

「1番高い煙突の出ている工場からは何を作っているんですか?」

僕はホルマンズに訊ねた。

「プラスチック、ビニールを作っています」



夕食を取った後、風呂に入って「娯楽国ホケメダン」直属のテレビを見てい
た。どこかの劇団の人形劇とミュージカルだった。別の「ホケメダン」の番組
も見て、0時を過ぎるとソフサラコマはベッドに入った。

高層ホテルからはインターの環状線道路の月より目立つライトと、工場で製
造した物を運搬するトラックやタンクローリーや、クレーン、ずっと島全体に
汽笛が響き渡っている外港の、おそらく遠く「ホケメダン」の輸送船や「ビチ
ュアンゼ」の貨物船、タンカーやカーフェリーや、ゆっくり時間をかけて上が
る、昇降機、中心区の1末外の道路を走るダンプカー、タンクローリー、トレ


ーラー、食品会社兼工場から出てきた小さなライトバンが見えた。僕はカーテ
ンをそのままにして、窓側のベッドの方に寝た。



翌日7時に起きて7時半からバイキングを食べに行った。朝食が終わると、
フロントの係りのところまで行って、会計を済ませて、外に出た。町の工芸屋
に行って、ルチャーナについてもっと詳しく聞こうとした。機械兵器セネアト
レクについて聞くことはやはり駄目なような気がした。

「このルチャーナでまだ残っている伝説などはありますか?」

「そうですねぇ…」

中年のチュースという小母さんは言った。

「うーんと、北西の『ビチュアンゼ』の『ダギラメの谷』の隕石の死で有名な
ホチョーチは、数千年前、ここの『ルチャーナ』で織り子だったそうだねぇ」

「なぁ、『ダギラメ』のエニヨンタが言っていた話だよ」

ソフサラコマは言った。

「ここで働いていて、ホチョーチはその後、シンラークのいた『ダギラメの谷』
に行ったんだ」

僕は答えた。

「北の『ゼートラゼ休火山』の周りは、鉱山でいっぱいです。この世界の金属
のすべて殆どは、此処で採掘されます」

「宝石とかはそこで採掘されないんですか?」

店棚に前足をついて飛び乗ったソフサラコマは聞いた。

「『サーニンダ採掘場』で採れますよ」

チュースは答えた。

「『サーニンダ採掘場』からダンプカーで地上に上がって来て、工場で加工し
たり施したりして、港へ持って行って輸送船に乗せて『ホケメダン』などに運
んで行きます」

「詳しいですね」

僕は彼女を褒めた。

「えぇ。そりゃあ地元の人間ですし、家内が工芸屋を始めてから何0年も鉱夫
として働いていましたから。『娯楽国ホケメダン』の全ては、TV局のオーナ
ーが管理しています」

その後、チュースにジャングルの探検隊のメンバーはどこにいるかと訊いて
みると、探検隊のメンバーの研究所は北東の森の採石場の前にありますといい、
研究員達は極秘に、山の地下の建設場で半分以上の人が働かされているよ、と
教えてくれた。


僕達はツーシーターに乗り込んで、北東の「へレコランダ研究所」まで行っ
て、研究所の扉を開けてみようとすると、開かなかった。

「あれ、おかしいな」

「残りの人も建設場に駆り出されたんじゃないか。というより、建設場が何処
にあるのかも分からないし」

「どうしようか」

振り返って車に乗り込もうとすると、突然、杖を持ったお爺さんが、

「バイオリンを造っている私の家に来なさい。あんた方に用がある」

と言ってきて、反対方向を向いて歩いて行った。



車でゆっくり追いかけて灰色の工場に着くと、爺さんはドアを開けて、

「お入り」

と僕達を呼んだ。奥で、背もたれの丸い足掛けを膝に.いた老婆がいた。

「私はバイオリン製作者のナヌコラーゼと言います。…このパイプをご覧下さ
い、中を覗き込んで下さい。煙が飛び出すでしょう? .は、あなた方を必要
としている人達が、この中にいるのです」

ナヌコラーゼ老人は言った。作業場の人間はエゾマツを磨く為に、やすりを
かけていた。また、バイオリンの裏板の方に向き、カエデを削っていた。死ん
だ白馬の尻尾の毛を束ねたさおを作り、ペルナンビーコ材を磨き、さおにまつ
やを塗っていた。組み立て、エンドピンを付け、油性の調合したニスを伸ばし
ていた。

「どうやら見つけてくれる人が見つけてくれるまでワープ先の北の『チャンチ
ャランダの島』の中で隠れているのだと思います。ジョイントをお使い下さい、
あなた方どちらかが1方だけ、この中に入ることができます。ほら、また煙が
吹いた」

「必要としている人?」

僕は訊ねた。

「えぇ、早く仲間をお助けなさい。これじゃ心配で煙草を満足に吸えりゃしな
い。私は気が気でならんのです。夢のお告げで神様からあなた方が今日『ヘレ
コランダ研究所』へ来ると言われた。ほら、今何を言おうか忘れた。物忘れが
激しいのです。私は、1年前から、街の皆に何もできなくなるように仕向けら
れていると思うようになって、引き籠もったのです。お婆さんのタンタリィは、
私の顔を見ていつもニコニコしているのです」

ナヌコラーゼは杖をついた。

「どうします? あなた方のどっちが、入ります?」


「僕達は今から山の地下のセネアトレクの建設現場に向かう為に、探検隊の研
究所を訪れたのです。あなたを信じたいのですが、どうも納得がいきません」

家の中へは暖炉の通路が剥き出しになっていて、玄関の先に飛び出していた。
ナヌコラーゼは笑った。

「1人で行ってみなさい。ソフサラコマ君は、己だけで盗賊団と戦うと思うよ。
強くなりなさい。リギーは、強い敵だ。君はソフサラコマ君を信頼している。
『ゼートラゼ休火山』の上には、3日月の海溝調査隊が使った調査船の持ち主
であるデボズルジの城は天まで聳える教会を真似て.だ建設中です。ソフサラ
コマ君には敵が待ち構えているでしょう。川を埋めた山の上までの道がありま
す。溶岩が噴火して昔通ったのです。城の裏の坑口から、坑道を通って、セネ
アトレクの建設現場へ向かったほうがいいでしょう。ソフサラコマ君だけで行
ったほうがいいでしょう。君の名前はなんと言うのかね? …そうか、君が行
きなさい。君の大事な仲間、…バートン君は、その…このパイプの中のどこか
にいる。指で出口を触れなさい。1瞬にして、この中に入ることができる…」

それからナヌコラーゼは咳払いをした。

「大丈夫ですよ。バートン君は北の『チャンチャランダの島』にいます。君の
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史