ジェスカ ラ フィン
扉が迫ってきて開かれると、景色は王様の寝.に変わった。2人の護衛が夜
に松明を持って悩むタイリュー王を軽視していた。
「あぁー、分からん!! いつも私の夢に出てくるあの男と兎のペアは一体何
なんだね!!」
タイリュー王は地面に向嘗て怒鳴りつけていた。
「ここが王宮ですか?」
思わず僕は口走ってしまった。
「ここは王宮だよ」
ソフサラコマは進んで来て口を開いた。
「あの人が王様です。どのように接するかは、自分でお考え下さい」
後ろからシャンクスは人任せに言った。
僕はタイリューの前に近づいて彼を呼んだ。
「すみません、私があなたの悩みの原因の張末人です。それとソフサラコマで
す。僕達は地上から遥々この王国にやって来ました」
タイリューは悩み続けた顔で僕を見た。
「ん? お前達が原因不明の私の不眠症の悩みの種だと? そういえばそうだ
が、今私はその夢に出てくる者達を地上に返してあげて、国民の為に盗賊団を
壊滅せよと命令しなければならないのだった!! お前達などと話している場
合ではない!! …何?! お前達がその英雄達だと!! 何を言う? 私の
求めている英雄は、この中に… はっ?! 枕の中にいない!! お前達
か?! ならば、調査船の入り口を通って、『ハノスマトセの泉』のピアノの
中から地上に出て3れ!! 盗賊団を倒して3れば、お前達が必要としている
ことを教えてやる!! …ではさらばだ!!」
タイリューはまた目頭を押さえて悩み続けた。赤い紐のリボンを付けた、木
の人形を手に持った女の子が、王様と僕の間を駆けて行った。すると、不思議
と不安が胸から消えていった。彼女は森の奥の扉を閉じて消えて行った。松明
は長時間立って見ていても1向に減らなかった。扉はそのまま宙に浮かんでい
た。行ってみて開けようとすると開かなかった。ソフサラコマとシャンクスは
笑って動かなかった。松明だけが揺れていた。
ソフサラコマとシャンクスの奥を歩いていくと入り口の通路に戻った。する
といつの間にかソフサラコマとシャンクスもいて、ソフサラコマは、
「どうしたのさ?」
と笑って訊いてきた。
「いや、なんでもない」
と答えて僕だけの部屋であると気づいた。
「タイリュー王は調査船の扉の入り口から泉のピアノへ出ろと言っていたよ
ね? もしかしてラロレーンのお父さんのピアノのことなのかな?」
シャンクスは言った。
「きっとそうでしょう。タイリュー王様の言うことはきちんと聞いていたほう
がよろしいでしょう。あなたにしか見えなかった話がそこにはあったはず。内
容だけは知っています。違う時間が流れているのは分かります。僕達は幸せだ
と思います」
シャンクスに橋の架かった「スワンダの小島」まで連れていってもらうと、
シャンクスに服を縫ってもらい、さよならを告げて手を振った。
「ここかなぁ?」
ソフサラコマはそう言って調査船の中へ入っていった。僕も後についていく
と、木製のこげ茶色の扉があった。扉を開けて入ると、重力が背中と前に働い
て、ソフサラコマが耳を倒すと、重力が扉の方に僅かに傾いてピアノの蓋を開
いた。グランドピアノを開けると、小鳥が鳴いたあの懐かしい森だった。ピア
ノの下には何もなかった。ポールを立てて、固定すると、不思議な感じでソフ
サラコマに、
「ラロレーンの家に行こう」
と言った。
「ハノスマトセの泉」の丸太小屋に入ると、アップライドピアノがあった。
蓋を開けると、奥で水が淀んでいた。女が顔を出して浸嘗ているのが見えた。
ソフサラコマに入ろう、と言って入ってみると、「チャンダンク図書館」の木
箱の末棚が間に置いてあるところに出た。窓からシャンクスが顔を出した。
「不思議でしょう? 分かりましたか? それでは調査船に向かいましょう。
盗賊を倒すまで、タイリュー王はずっとあの調子ですよ。そうですね…5匹ほ
ど倒したら、一度こっちに戻って来るように。タイリュー王はきっと回復して
います」
とシャンクスは言った。
僕とソフサラコマはまたシャンクスの足に捕まって「スワンダの小島」へ行
き、調査船の扉を開けた。
ビチュアンゼ国では高速道路ICが再び開通していた。検問に聞いてみると、
「リギーが娯楽国『ホケメダン』か商業国『コラダングス』の方向へ逃げ、流
通国『パシキゾーフ』から交通再開の命令が来た」
と話してくれた。ヘノルムの葬儀は終わってしまったと言う。僕達を追って
いた警察はどうしたのか。僕はバートンの免許証は僕のジョイントで僕の顔と
年齢に偽造した。
レンタルセンターで様々な形の車がある中から、オープンカーのツーシータ
ーの車を借りると、バートン名義でお金を借りて払った。艶々の黒の左ハンド
ルのツーシーターに乗り込むと、IC前にやって来て、「ビチュアンゼ」―流
通国「パシキゾーフ」間のカードを受け取り、料金を払い、料金所を通った。
バイパスを通って、アクセルを踏んで時速120kmを出して飛ばし、.の
方角へと下っていった。初めて他の人と車がすれ違った。畑で背中の篭に玉葱
を掘って入れている人が見え、大陸を縫うようにして通っていた川の河口が見
え、「タタ通行所」の辺りに「ハヌワグネ時計工場」の煙突と煙が見え、雲ま
で迫った山々が見え、半島の近くにはソフサラコマと初めて出会った森があっ
た。スカイブルーの海があった。ダッシュボードに入っていたサングラスを僕
とソフサラコマはかけた。ハンドルを握って大きく左にカーブして、「海上高
速道路」という看板を通った。数時間の間に数十台の車が僕達の車を追い抜い
ていった。「海上高速道路」は、ぽつぽつと点在した小島や無人島やそれらの
山の近くや陸上などに柱を立てて娯楽国「ホケメダン」まで延びているらしい。
暗くなるとサービスエリアで宿泊し、2日間走り続けた。小島の上や大陸の
上を通過する時、農村や酪農地帯、畑や、衛星国らしきものが見えた。ところ
どころで、名も知らない知名度のあまりない国へ降りる細い分かれ道があった。
「…うん。もうそろそろ奴らが現ると思うな。奴らっていうのは、盗賊団の百
足のノザロッチと鈴虫のルトワーゼだよ」
「ノザロッチは死んだんじゃなかったの?」
「いや、ノザロッチは、復活してやって来るんだ。ジョイントに慣れてきたら
奴らが近づいてくることが分かるんだ。もうじき来る。.悟しよう」
乾いた衝路の直線の高速道路を進んでいくと、後ろから猛スピードでバルカ
ン胞を持った狐の下っ端と百足の顔のノザロッチが出てきた。スピードを上げ
て接近してくると、横に並んで、タックルしてきた。僕は上手くハンドルを切
ったがバンカーにぶつ嘗てしまった。ノザロッチが首を伸ばして僕の首を攻撃
してくると、ソフサラコマは体を横に逸らして頭を守って逃げて、僕は、
「くっ!!」
と声を出した。
ツーシーターをオートにするとシートベルトを外してシートの上に乗っ嘗て
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史