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ジェスカ ラ フィン

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えた。僕は心の底で優越感を感じていた。僕は若かった。衣服が胴着の帯のよ
うにパタパタとたなびいていた。僕は下を向いて、ソフサラコマが何か他のこ
とを言ってくれるのを願った。

ソフサラコマのお腹にちょこんと置いた両手が可愛かった。ソフサラコマは
泣き顔になっている僕の顔を心配そうに見ていた。


「ラロレーンも、バートンさんも、ペリンガも、ウィスウィングルも死んじゃ
ったね。悲しかった…こっちに助けに来た時にお前しかいなかったのを見た時
…何もできなかった…」

「…みんな『ジャトジャス遺跡』に着く前に死んじゃったんだ。ジャングルを
駆け抜けたり回転する『ターピスの灯台』に吹き飛ばされたり灯台の屋上で敵
を見据えて攻撃に備えたり…死んだんだ…僕は力を出し切れなかった、ただい
いように吹き飛ばされていた…」

「落ち込むことないよ、君はよくやったと思う。僕は何もできなかったけど君
の活躍を牢に入れられていた時にぼやけた満月に君の想いを乗せて頭の中で考
えていた。?ジョイント?だっけ? ギュリュフと君の小さな声が微かに聞こ
えたんだ。戦ってる、って思った。僕は妄想すること以外じっとしてた…暗い
灰色の霧が浮かんだ。僕は…生きている?」

「何を言っているんだよ、君はここにいるじゃないか」

僕は涙を流した。

「ペリンガが殺された時もうダメだと末当は思ったよ。ジャングルで朽ち死ぬ
と思った。でもバートンが盗賊団のノザロッチを倒した時僕はギュリュフに勝
つんだ、と思ったよ。君が待っている。ってね。白い鷹のような翼を生やして、
君を抱いて天上世界に連れて行くイメージをした。雲が横たわっている青い空
をイメージした。僕がそれに浮かんでいるイメージをした。そう思ったら、勝
てると思った。…そして此処にいる。ギュリュフは伝説の巨大機兵・セネアト
レクを復活させようとしている。逃がしちゃったけど、ここからやり直して必
ずや奴を仕留めてやる」

ソフサラコマは肩を落として、笑っていった。

「きっと上手く行く。僕もらうが使えるようになれば頑張れるような気がす
る! 神殿に戻ろう! 今日はゆっくり休んで、明日図書館に行ってみよう!」



夕暮れになった。神殿に戻って、ネルス.年に、

「あのーっ、城まで遠いんで、宿泊していってもよろしいですか?」

と訊いてみた。

ネルスは、

「ええ。いいですよ」

と笑って答えてくれた。



夜、外に出てみると星が奇麗だった。


ソフサラコマを抱えて2階に運んでいった。寝.に持っていって目を開けて
じっと、僕を見つめているソフサラコマを見た。ソフサラコマは笑って一言2
言話しかけてきて心が和んだ。ベッドの上に乗っけてシーツをかけると、

「おやすみ」

と笑って眠った。僕も自分の寝.に戻って眠りについた。



翌朝起きると、外に出て北の「チャンダング図書館」に向かった。北の「チ
ャンダング図書館」までの道のりには何も無かった。鳥羽色の岩盤が地肌のま
まそのまま平たく歪みなく伸びていて、後ろを振り返ると、台形の形になって
いた。ソフサラコマが笑って駆けて来た。風が吹いていて、灰色の大地に、青
い空しかなかった。「マタハラーの神殿」は小さく見えて、小さな「チャンダ
ング図書館」がコンクリートのように見える滑る土地に立っていた。

コンクリート色のドラゴンが図書館の屋根の上に腰を降ろしていて、僕達の
気配に気づくと、短い剣を刺したような尻尾を振って笑った。

「こんにちは。『チャンダンク図書館』の図書司書のドラゴンです。今日はあ
なたが来ることは分嘗ていましたよ」

「『トヤランズ城』は何処ですか?」

僕は訊ねてみた。

「お安い御用です」

ドラゴンは言った。

「遥か北に、『トヤランズ城』がございます。タイリュー王がお城で眠ること
ができずお待ちしております。久し振りなのです、実人は。まだお若い王様で
す。私は普段『トヤランズ城』より北の『バンダラ天文所』で見張り番をして
おります。私の名前はシャンクスです。図書館に何か調べたいものがございま
したらお調べ下さい。ではどうします?」

「このまま『トヤランズ城』に向かいたいんだけど」

僕は答えた。

「でも、知りたいことがあるかもしれないからちょっと調べ物をしてみようか
な」

ソフサラコマは答えた。

「それはよいかもしれません」

シャンクスは笑った。



桃と桃の葉と蔓の模様の壁に包まれた「チャンダンク図書館」の中へ入って
みると、見たこともないカバーデザインの詰まった程よい大きさの末棚が鼠色
の絨毯が.かれて隙間を大きく開けて置かれていた。中心のニスの塗ったミニ


サイズの角のつるっ、とした机と光沢の無い椅子が4脚があった。上を見上げ
てみると、紺色の分厚い古い末があった。しばらく見回して、適当に末を選ん
だ。タイトルを見てみると、天上世界の厚い百科事典というものがあった。ペ
ラペラとページを捲ってみて見ると、巨大水族館という項目があった。僕は末
を閉じて元のスペースに戻した。くるっ、と振り返ると、ソフサラコマと一緒
に出た。



「ジョイントとは、私たちの2つ以上の感.と1つ以上の念によって、1つの
跳躍した意思を体内から取り出し自在に操ることです。感.と念を数多く使い
こなせて初めて頭の中のイメージを瞬間的に具体化することができるのです。
ここから飛んで城まで送っていこう。体を癒すためにジョイントをかけていて
もいいよ。服は縫ってもらおう。足の平に乗って足首に掴まって!! 飛ぶ
よ!!」

シャンクスは僕がソフサラコマを抱いて飛び乗ると、羽をバタバタと動かし
て、埃も出さないで上空へ飛んでいった。空から見てみると末当に何もなかっ
た。



羽を動かしてすぐすると、「トヤランズ城」が見えてきた。下りると、濁っ
たガラスデザインで火が灯ったポールが2つ立っていた。荘厳な扉の前に立つ
と、扉が勝手に開いた。開けると、門に立っているみたいだった。暗い色の霧
の中に歩を進めた。手の短いシャンクスが足の太股を曲げて後ろから歩いて来
た。ゆっくり見回した。扉は遠くに置いてあった。どこかに光源があるみたい
だった。

「うん? どこにあるんだろう?」

1回りすると、何処にも扉はなくなっていた。シャンクスとソフサラコマだ
けがスケールや性格ででかく映った感じを小さい両手で親密な雰囲気にしてい
た。

「タイリュー王達はどこに行ったんだろうね?」

ソフサラコマが姿勢を整えた状態で言った。

「うん、私にも分かりません…」

シャンクスは相槌して僕を見ていた。辺りから西洋の鼓笛隊に似た赤い制服
の男がバレエダンスでやって来た。ぶつかる! と思って避けると、それは幻
想だった。鼓笛の男は遠くへ行くと突然消えた。タイリューとソフサラコマの
立ち位置が変わった。

「さぁ、行きましょうか」

シャンクスはそう言って僕を先に行かせた。



作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史