ジェスカ ラ フィン
瓶」は、ケースの横に置かれてあった。僕は、ピネイル王女とケッティのハン
サメとレオポンのチンギューガとソマゼに、「アパプルードの海水」と、「シ
ュンプレンナの宇宙の糸」を見せた。
「おぉ、これは素晴らしい…これこそ、末物の『アパプルードの海水』と、
『シュンプレンナの宇宙の糸』です…。しかしあなた方には、『ソピョーゾギ
ャニアンの宇宙』を、パパロメのぼろ布にパッチワークのように縫うことはで
きません。ですから、『センファビルの天の川』の近くに住む、元「ダギラメ
の谷」の住人の、シンラークと、ホチョーチに、新しい宇宙を縫って貰うので
す。けれども、まだ、『メッタラーの針』がありません。最後の道具です。御
覧下さい…」
ピネイル王女は言って、僕達は、「トヤランズ城」を出て、上空の「テンピ
ョーテイレンの宇宙」を向いて、「ヘーミッド」の世界を見た。
「あの黒いものが『ソピョーゾギャニアンの宇宙』です。『テンペライモンド
の神殿』はもう深い砂の中です。ハンサメ、チンギューガ、探索機を出して下
さい」
ピネイル王女は言った。すると「トヤランズ城」の裏の何処かからか、探索
機のキャタピラをキャラキャラと鳴らして、ゆっくりやって来た。
「『ジャンガズガンズの癌の森』は、神聖な森で、もうすぐ、JKのジャンガ
ズガンズが復活しようとしています。今、『ペパラロンテ』全体で、『パパロ
メの巡礼』が行われています。巡礼者が、『ソンデワン』の、『宗教国スギミ
ダ』の穴から、出てくるのです。それが、JKのジャンガンズガンズまで復活
してしまったら、『テンピョーテイレンの宇宙』に落とされることになります。
零下数億℃の世界で、1瞬にして氷漬けになってしまいます。更に、『裏の雲』
に跳ね返って、重力の入れ替わる『ソンデワン』の世界で、一生を地獄の労働
で費やされるのです。この『ハンスワデ探索機』に乗って、焦点を定めて『ソ
ピョーゾギャニアンの宇宙』に突っ込んで下さい。『ソピョーゾギャニアンの
宇宙』は、『砂以外の希望のある物体』を、吸収し、『地底世界ソロンペパー
ル』の地面に、『文明国スワンダ』の住民、『ソンデワン』の世界の住民、
『ヘーミッド』の世界の住民達の桃色の睡眠時間を降らせています。あらゆる
物に溶け込んで、『永遠』を植えつけます。1瞬にして命の時間のペンダント
は砕け散ります。が、しかし、『ダイラコダラム』の世界を平和にすると元に
戻ります。『永遠』になると、砂時計の星になりかねません。とても幻想的な
世界の幻想的な霧ですが、猛毒です。1瞬にして『ハンスワデ探査機』の中に
居ても、永遠の毒が回るでしょう。.悟が必要です。『アッペランメの重力』
は、『ライファモンの神殿』が壊れたせいで、上に向いています」
「では行って来ます」
僕はピネイル王女にそう言って、「ハンスワデ探索機」に乗り込もうとした。
「僕はもうここから出られません」
ソンハが言った。
「命の時間が無くなったのです。もし『ヘーミッド』の世界が崩壊して、『文
明国スワンダ』の命の時間の速さが地上に伝わったら大変です。『寿命が永遠』
を超えてしまうのですから。僕は幽霊となってここでピネイル王女とケッティ
のハンサメとレオポンのチンギューガを守っていようと思います。幽霊になっ
ても肉体が滅びてしまえばお終いですからね。申し訳御座いません。私は、こ
こで、あなたの.来を見つめています」
ソンハは、静かに言った。ソンハは、.し透けて見えた。
「じゃあ、僕は行くよ。この探査機には翼も付いているしドリルも付いている。
海だって渡れそうだ。僕は行くよ。今まで集めた備品と、ソフサラコマの遺体
を頼む。じゃあ、生きて帰れることを願う」
僕はそう言って、「ハンスワデ探索機」の中に乗った。勢いよくエンジンを
爆発させると、「文明国スワンダ」を飛び出た。そして、「ヘーミッド」の世
界の地上の、「ソピョーゾギャニアンの宇宙」へ、「ハンスワデ探査機」が大
気圏を突入して火車になっても、下昇し続けた。そしてとうとう「ソピョーゾ
ギャニアンの宇宙」を突き破った。何重もの岩盤の層を突き破った後、1瞬に
して景色が変わった。…「地底世界ソロンペパール」だ!! 「アッペランメ
の重力」の向きが変わり、僕は桃色の、「ダイラコダラム」の住民達の、「睡
眠時間の霧」、というものを、猛スピードで突っ込んだ。それはフロントガラ
スに付着し、僕は桃色の霧を抜けた。すると命の時間のペンダントが砕けた。
また、ハンサメやチンギューガに造ってもらおう。「睡眠時間の霧」を抜ける
と、ゆっくり機体は上向き加減になった。「ハンスワデ探索機」はふわっとし
た、桃・紫・白色の黴が生える地面に下りると、僕はキャタピラを.し進めた。
「何処に『インニニスの街』があるんだろう?」
僕は独り言を言った。ピネイル女王の言った、
「『アッペランメの重力』は上を向いている」
という言葉から推測すれば、「デンダララン」の中点から伸びる「引力」と、
「スペランザ維管束道」の「ゾッドメラー砂道」へ垂直に近づこうとする、
「遠心力」の合力のせいで、「『ダイラコダラム』の住民の睡眠時間が僕の体
に集まる」のだ。「アッペンラメの重力」を早く解除しなければ!! 「永遠」
を生み、この「地底世界ソロンペパール」の何処かに彷徨っている生き物達が
いるのだ。案の定、生き物達は、意識を持たないまま、「地底世界ソロンペパ
ール」の睡眠時間と睡眠時間が摩擦して起きた塵を、踏んで、生きていた。
「ジャンガズガンズの癌の森」は何処にあるのだろう。食料を忘れて来たかと
思ったが、ちゃんと積んであった。3ヶ月は持ちそうだった。季節の無い世界
だった。隔絶された星が、近くで無数に煌いていた。様々な幻想的な黴の、山
があった。ドリルで突き進んだ。黴の山があるだけだった。中心に、「インニ
ニスの街」があるのかと思った。
10日間走り続けた。後ろにキャタピラの後がつき、黴の花びらが舞った。
「インニニス街」が黴の丘を登ると見えて来た。美しい「ソッマザ湖」に囲ま
れて「インニニスの街」は在った。「インニニスの街」に着くと、「ハンスワ
デ探査機」を下りた。人々は、ジョイントで、体を優しく包んで、慎ましく暮
らしていた。
「あなたをお待ちしている方がいらっしゃいます。ついて来て下さいまし。睡
眠時間の塵を浴びると、眠たくなってしまいます。『地底世界ソロンペパール』
は、上瓶の汚水を洗浄する世界です。神に与えられた仕事で、代々浄水処理を
行っております」
「インニニスの街」の住人のレンポはそう言って、僕を煉瓦造りの家へ導い
た。茶色の煉瓦の家の屋根には、睡眠時間の塵が積もっていた。それを下ろす
見慣れた茶色の外套を着ている学者風の男がいた。…バートンだ!!
「バートン!!」
僕は叫んだ。
「…エクアクス君!! 私は君に会えて嬉しいよ!!」
バートンは屋根の上から叫んだ。ショベルで塵をかいていて、梯子で屋根か
ら下りて来た。
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史