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transcendence

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象の独り言。猜疑心の愛。鉄製の東洋曲。高速の新幹線、離脱、又は脱落。
世界の底の怒り。埃の死骸。止まることのできない一度目の人生、夢、バルー
ン。鉄の水面から飛び出した僕、道化師の悲鳴。夜のトランプに刻まれた三日
月、ミュージカル、無限大の想像力。二人の姉妹の為の熱、不思議な創造主の
母、そこで止まる無知な人類。死にたくない。

食品用ラップフィルムを広げ、そのまま両手を左右に動かす小人達。東洋文
化の破裂。貧相な埃の中、僕の臍の辺りまでの想像力の恩師の虚しさ。それに
対する虚しさ、光沢を帯びた光に刺されたツタンカーメン。理想郷に近い匂い。
此処まで聞こえて来る魔術師の象の音楽、蓄積していく自立心。忙しない僕に、
数秒の休息の脱自。天下無敵の黄金律動。睡眠。

うねりながら立ち昇る、音楽の龍、パチンコ玉の色と味、下町の風情ある駅、
作者の意図が分からない詩集。僕の心は詩人を孕み、ようやく僕は静電気の震
える音を聴き分けられるようになった。バルザックと宮廷。今まで詩を書いて
こられたことへの、おそらく自分への感謝。弾かれる陽気そうなヴァイオリン
の弦。

インプリンティング、黄色いポリ塩化ビニルの風呂遊具、幼い僕の心は其れ
を追い掛ける。幼児への退化願望。僕は詩とは何であろう、と己に問い続ける。
昨日の夢を左目の方の脳に寄せ集め、襖を閉じ、一人、哲学に耽る。「あなた
は宗教ですか?」と青い患者に訊ねる、口笛。海底の水泡、其れの存在意義。
勝の心象が刻印される。殺伐とした星空の下の、法成寺跡、其れ以外のこの暗
闇に浸る周りの存在など消えてくれればいいのに…。僕の心の冷たさと、殺風
景な法成寺跡の地面の冷たさが呼.し、僕の体内中にブリキのオーケストラ達
が長い夜だけの砂漠を越えて、楽器を奏でながら、一歩一歩近付いて来る。僕
は寝て居る猫を抱き上げ、彼女の腹部に顔を埋めながら、何も録音されていな
いバイエルを何度も聴き続けると夜はようやくやって来た。


強い光を放つ孤独そうな満月は、一体一日どれ位稼いでいるのだろう。暗闇
の茂みから、僕は掻き出て、森の天五から微かに見えていた満月をようやく、
何の障壁も無く、光の果皮の剥けた瑞々しい満月に、思わず唾を飲み込んだ。
黄金色に染まる水面に今にも熟れ過ぎて、果実が鮮度を失ってしまいそうだ。
僕はリクルートスーツを脱ぎ捨て、水面に唯一反射する、ぷるぷると震える満
月の光の中へ入り、そうして僕を支配した心は.しずつ良い方向へ向かって行
く。

 雨によって女は服も、髪型も、そして化粧も、全て豪雨によって濡れ、セッ
トは漏れ、顔に天界の地図を成す。僕は防波堤のガードレールに凭れながら、
真昼から大量の酒と煙草を飲む。僕の鳥は何の為に生きて来たのか分からない。
そして、僕の唄声は更に役に立たない。鈍よりとした.雲は、僕と全生命体と、
神様以外の何者かの第四者によって作り出されているような気がする。勿論自
然はその対象には該当しない。白骨化した死体は、電光掲示板にふざけた言葉
を流し続け、其れが僕に真実を突き付ける。





 sleep



精密に並べられた衝撃が僕の心の姿勢を正す。血管に小さな森の欠片が詰ま
る。風が吹く。青い熱を帯びた僕の眼球は、螺旋を巻きながら空の痛みを全身
へ伝導。

誰も居ない灰色の舞台で、僕は安堵し、過去の苦痛に溜息を吐く。瞼の裏の
微熱が深夜の僕に眠りを齎す。猫と猫は静かな吹雪の中、性交し、僕はその為
に空いた暗い穴をまじまじと見つめる。僕は十.歳の終わりの冬に路上に倒れ、
星々の冷や汗と物語に感銘。細い線を伝って行けば、行き着く先はいつも光沢
を失った純白の世界。其処には僕の未来みる夢が降り積もっていて、其れは.
し空気の綿飴に似ているのだ。ワゴン車の左扉を閉める音が僕を不快にさせ、
真後ろの脱衣場への扉の錠が僕の背筋に食い込む。未だ癒えない言葉による傷
口。僕は本当に眠りたいのだろうか。目の前に拡がる、有限の可能性から逃げ
ているだけなのではないか?

同人誌が毎晩僕の夢の世界へ届けられ、吐き気のする出版社内に幽閉される。
一秒間の睡眠と、対比できない喪失した記憶。主体の無い僕の心、ヒーターを
消し、鉄のように素早く冷えた眼球と瞼。万人の世界性から逸脱せよ!!

崖の淵にて、孤独と睡眠の日々。食糧は気体となって風に乗り、暗闇の一番
濃いところからやって来る。仮死状態の薔薇の花。隣家の屋根裏部屋の殺人鬼。
どたどたと五月蝿いのだ。そんな昔の記憶を思い出す自分が情けない。覚醒の
欲求が脳のスケールで最重要神経を震わせた。この月も星も無いこの夜、もう
僕は迷うことなく異国へと旅立てるだろう。自分の意思で……。

低脳思想に侵された鯨、僕は公園で彼女が潮を噴き上げるのを見る。彼女は
この盆地に打ち上げられ、自分の体液で乾いた皮膚を潤しているのだ。飛行船
が飛んでいる。太陽の脇に挟めた体温計が破裂した。空が銀色に塗り固められ、
僕はベンチに寝そべりうつらうつらとし、意識が遠ざかっていくのを承諾…。

ハート型のチョコレートのような心を持つ人間を僕は射たい。三十歳を超え
た詩人は僕に銀行強盗を命じた。彼には全ての詩や歌詞が霞んで見えるという。
但し、己の作品だけは明瞭に映るというが…。僕の心には重いストレスが掛か
り、故郷の記憶に一つずつ、火を点けていった。そうすることで容量の決まっ
ている僕の脳味噌にスペースができるであろうから。結局僕は命令に反したこ
とで彼から堪え難い精神的拷問を受けたが、その三日後に突然彼は僕の脳の空
白の中で首を吊って死んだ。総て、僕の脳裏で起きた現実だったのだ。

完成するまで四十分も掛かるカップラーメンに入っていた、猫の髪の毛。宇
宙の端から漂う甘く、苦いメトロノームの匂い。首を吊った詩人と真空極寒世
界の奇跡。憎しみの根源を窘める、其れの仲間達。口の無いヒーローの人形が
自分の両目を抉る。僕は其れが怖くなって外界に投げ捨てた。

ダブついた鬱憤が僕に非常警報を鳴らした。白鳥の両翼が圧し折られ、僕に
必死に助けを求めて居た。吹雪の強い日、僕は過去へ逃げ出した。二つのハー
プのネイロが夕暮れの故郷に明かりを点け、其の風景画は僕の心に直接焼き付
いた。雪山の頂から転がり落ちて来た雪玉は北国を押し潰し、流氷を伝って僕
の凍て付いた皮膚をべらりと剥がした。そんな夢を僕は最近、道端で拾った、
寝不足気味な精神病の影を引き摺って。





 emptiness



誰かが動いて行く。満月が地平線に沈む瞬間に生まれるぎりぎりの空間で。
僕は生まれ変わり、天性の才能を持つミュージシャンと出会う。僕は現実の奥
のモノクロな世界を空想し、次々と心の悲鳴を上げるのだ。季節が変わり行く
につれて歳をとる孤独。僕の中の秋の世界で、生温い時間と沈黙が停滞してい
る。「詩とは藝術である」、そんなことを僕は詩作に向かう時、しみじみと思
う。全ては復讐の為に費やした時間が、其れが僕の思い込み、若しくは虚しい