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transcendence

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罪を重ねずに生きていけたらいいなと思う。広大無辺な平原を前進し、また横
断する動物達、僕は人間、死んで逝ってしまった人々は、宗教の概念からすれ
ば、元気でやっているだろうか、目出度い宴の場で其れ等の事について、僕が
ふと涙を流してしまったのは、何故なのか。僕にも、現在では考えられない、
若しくは相.しく無い、普遍的な幸せが懐かしい未来に待っているのだろうか。

天国に海が在るのならば、其の世界は球体状なのか、其れとも、広大無辺な
世界なのだろうか、其れとも、限り有る場所なのだろうか。地獄にも、冷たい
海が在るのだろうか、ならば、何故僕や君は天国や地獄で生まれなかったのだ
ろう? 何の理由が有って、僕達は此の現実世界──いや、天国も地獄も?現
実の世界?だ──に生まれてしまったのだろう。何故、君は永遠に美しいまま
なのだろう? 君は優し過ぎたに違いない。





 dive



僕の感情と共に輝く海、砂浜の野花、どんよりとした俯きがちの心象世界。
白波に濡れた波打ち際は僕の足跡を決して掻き消そうとはしない。アクセルと
ブレーキ、中庸という運転手を乗せた人生はドライブだ、僕は得体の知れない
虫を胸の内に飼っていて、其れが詩作という感情吐露物をクリーム色の高い壁
に叩き付けるのだ。孤独という名の溜息は、裏切りや憎しみを外界、という四
次元空間を媒介にして、いつかは愛しき君の耳朶を軽く二、三度、ノックする
だろう。僕は結局のところ、何処に存在していても、建前とは裏腹に、僕の脳
裏の薄暗闇で蠢く己の絶望、虚無を温めながら、生活の一部と化した詩作に打
ち込み続けるのだ。譬え糖尿病に罹って指を失ったとしても、僕は吐き出した
写真を見つめながら、切断してしまった指の代わりに肉体の一部を使用して、
悲しみや他者には決して見せる事の無い希望の光を文章に塗り込んで、創作し
続ける事であろう。

究極の緊張感と其れを打破してしまう程の緩やかな明るさ。液晶画面の前で
眠る亀、真夏の夜、祭の灯り、君の微笑み。僕達は薄茶色の心で繋がっている。
縮こまらない君の美しさと対照的な、垂れ流れる生温い笑いの陳腐さ。僕達は
世界から最も遠い場所で、冷たい笑みを湛えた大人や子供達の間を練り歩く。
此の肉体から力が無くなったとしたら、一体、此の茫漠とした、広大無辺な絶
望をどう吐露すればよいのだろうか? やはり僕もまた、白い空の下、ジェッ
トコースターの様な速さで宙返りするのだろうか。そしてきっと、着地した地
面は温かく、僕は緊張感から生まれたストレスを、煙草の様に溜息として吐き
出すのだろうか? 生きている事だけで間誤付き、激しく混乱し、呼吸を繰り
返す事も許されず、じっとして居る事すらも不可能な、若年性アルツハイマー
病の様な僕には、Wordの入ったパソコンを一台、息絶えるまで、介護保険
制度を利用し、与えておけばいいのである。其のパソコンのWordには、恐
らくきっと、僕の人生の集大成が保存されているであろうから。

僕は小説や詩を書く為に生まれて来た、そう明言するのはおこがましい事で
あろうか。黒い結晶が僕に何かを語り掛けて居る。彼は自分では動けないので、
僕の胸ポケットに移してあげて、いつかの近所の子供達の叫び声に耳を澄ませ
ると、昼が僕の心に重く圧し掛かり、島が海賊船を求めて動き始めるイメージ
がふと浮かんだ。二人の凡人が僕を黒く染める。僕は君の裸体を白く美しく染
め上げる。太陽が、最後の悪足掻きで橙色の空を墨の様に黒く壊死させた。打
ち上げ花火が満開と成り、其の花弁を極個人的な終末の王国に落下した現実、
口髭が似会う文豪の其の王国はものの見事に炎上し、三千人の魂が夜空に滴り
落ちる摩訶不思議。濃い春と、一瞬君以外の女性に意識を奪われた霧、此の世
のあらゆるものが君に恋心を抱く理由が何となく、分かる気がした。

バスケットボールのゲームで滴り落ちた汗、青春時代の混沌と、悲しい真実、
緑の堤防の上に広がる、白い曇り空、世界の法則、太陽の昼寝。満月の推理小
説…。肉体労働並みの執筆作業が終わった後、五月の外界の心地良い空気を吸
えば、自制心が解け、昔を思い出し、感傷的に成るのではないだろうか? し
かしすぐにでも気持ちを切り替え、今日という一日を終え、明日がやって来れ
ば、其の先再びきっと僕は絶望的に落ち込んだり、其の時に、偉大な真実を発
見できるかもしれない。だから僕は詩作を止めない。





 country



真夜中の田園を駆け抜ける僕。風一つ無く、昆虫達の外来語的なハミングが
聴こえる。魔法の音色が田園の赤い幽霊達に依って奏でられ、星屑が彼等の指
から零れた。僕は君の事で涙を流す事で君を忘れていき、君は頭蓋骨の欠片に
僕との最高の一日を焼き付け、やがて大気に埋め込んだ。どんなに辛い事が有
っても、この先も生きていくんだよ。僕は今この瞬間を生きているからこそ、
君への愛の言葉を綴る事ができるんだ。人間は生まれた瞬間と死ぬ瞬間に田園
の赤い幽霊達に魔法を掛けられるのさ。昆虫達のハミングを真似し続ける事は
実に寂しい。胸が苦しく成る。

流れ星に跨った見習い魔女の君。僕だけが抱えて生きて居るサリンジャーの
文体へのトラウマ。僕は今、君と同じ様に流れ星に跨って新しい宇宙を創造す
る。培養増殖させる宇宙、世界、無限=永遠。永遠が魚の小骨の如く喉に引っ
掛かって……。何を期待して居るのだろう? 何を期待して居るのだろう?
僕は? 僕達はガソリンの海を泳ぎ渡るジャンボジェット機だ。野獣達の唸り
声。僕特有の、勇気の無さ。田園の赤い幽霊達は魔法を奏でられ続けられる。
君の頭蓋骨の破片の中でも─どうして君はシンデしまったのさ?─、僕の頭の
中でも…。唐突に左脇腹に飛び込んで来たパンチ、を被害妄想、僕等はこれか
らもあの思い出の中で生きていけるんだ!!

真夜中の空港。ライトフライヤー号が離陸する。僕の心はあの日の星空を飛
ぶ事ができる。可能な限り飛行し続ける事ができる。たたみ掛ける様に独りぼ
っちの僕を支えてくれる虚無の虚無。幻想の世界─其処は濃霧と森で世界中が
覆われているのだ─の畔にて、僕は君に湿った接.を施す。僕は森に還る。森
は僕のこれからの人生の全ての根源と成り、糧と成るのだ。弛んだ欲求を僕は
心臓の痛みから外して客観的に凝視する。全ては田園の赤い幽霊達から吸収し、
オーケストラの為の幕が開けられて僕の、君の心を開放できたらいいな、噎せ
返る濃霧の森にて。僕はおこがましく世界中の生き物達の為に震え、太陽と分
裂した宇宙の底で踊る。踊れ、踊れ、君の笑顔がもっと見たかった…。

盆地なのに波の音が聴こえる。盆地に波がぽつぽつと降り注ぐのだ。田園の
赤い幽霊達は死に、死に絶えたパイナップルの飴は僕の舌の上で.円玉の様に
転がる。思い出す、君の噛んだミントガムの味が無くなれば、再び時が流れ始
める、という事を。パイナップルの飴をまた一つ舐め始める。「コメは要らな
いので、パンを恵んで下さい」、噛み砕かれるパイナップルの飴。僕達は譬え