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transcendence

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口の中が血だらけに成ったとしても、美味しいものを食べ続けるのだから。だ
から、あの時、君の手を握り締めておけばよかった。君は僕の心に、僕が死ぬ
まで心に居残りを食らい続ける。君が生きて居れば、僕は君と同じ傷の痛みを
緩和し合い、結ばれ、真夜中の田園を共に駆け続け、赤い幽霊達と踊り合い、
たった一夜が永遠の星の光と成っていたはずだった。無念。

宇宙の底で無数の星屑と君の笑顔が溜まっている。僕は君の御蔭で物書きに
成る事ができた。だから、僕は君を一生、愛し続けるよ。もう、僕の人生には、
君を上回る女性は現れないだろう。だから、僕は君の事を、物語にしろ詩にし
ろ、形として遺したい。そして、其れ等は僕が君を愛した歳月だけ、此の世に
残り続けて欲しい。つまり、また君にあの日会えるまで。僕は君だけを信じて
この先も生きるよ。君への愛はこの上なく柔らかく、白く、僕よりもとても泣
き虫なんだ。僕は君の「永遠」に成る事ができる。





 sun



涙の楽園にて、僕は涙を浮かべ、君の為の唄を歌いながら、作品を創り続け
る太陽。君の涙の潮の香り、僕の心に漂って来るよ。癖に成りそうな唄で僕と
君の両耳を閉じて、陽の照る世界へ出よう。滑稽な人生な僕が追い掛ける君の
影、僕は明日死ぬかもしれない、自殺と事故死じゃ、逝く先も定められるのか
な? 遠い夏への切ない望み、君への哀慕、運動不足で鈍って居る此の肉体。
闇を溶かす此の肉体の放熱、三日月の様な海辺の町、僕と君は其処で高校時代
を過ごし、ボロ校舎の屋上で、今日の風に似た潮風を浴び、好きな音楽を好き
なだけ聴き、好きな小説家や詩人の本を好きなだけ読み、仮眠と取り、気が付
けばいつも午後八時過ぎだから、君の冷たい体にキスの日差しを降らして君を
起こしたなら、格安のラブホテルなんかに行って、カラオケを歌って、いちゃ
いちゃした後、此の胸の奥の痛みが消え去るまで、君とセックスし合う。

授業中、ぼんやり君を哀慕して居ると、いつもの様に英語の教師にチョーク
を投げ付けられてしまったよ。そしてクラスメイト達の嘲笑。僕はどうして自
分がこんなにも笑われているのか分からない。下らない部活動の顧問に退部届
を提出した後、涙の楽園にて、君の事を追慕しながら、切り株の上でマスター
ベーションをする。君は晴天の空の様に此の世界から姿を失った。精液で汚れ
た右手を泉の水でばしゃばしゃ洗う。其の泉の水を狸が飲んで居た。きっと僕
の精子は食道を流れて行き、消化され、タンパク質として彼/彼女の栄養素の
一つと成るのであろう。そう言えば君も生前、僕の精液を一滴も残さず、毎回
の様に飲み込んでいたね。愛する男の精子を飲むと、美容に良いんだってさ。
君と死別してから、君を超える様な魅力的な女性になかなか巡り会えない。そ
して時々思う。僕も君と一緒に自殺していればね、第三者は僕達を愛し合う恋
人同士と勘付いてくれて、隣同士の墓に入れられて、地獄にて、自殺した事に
対する其れ相応の罰を受けた後、僕達はずっと若いまま、天国行きのエレベー
ターを使用する許可が閻魔大王から下りたかもしれないのにね…。

僕はこれから頑なに心を閉じて生き続けるつもりさ。できる事なら、君の大
きな二重瞼を何時までも撫でていたかった。息継ぎをする為に心の海底から海
面に出てみるけれど、三日月の様な海辺の町は既に廃墟と化し、誰一人として
住んで居ない。君と高校時代の大半を過ごした屋上には、万年雨期の雨雲が此
の海辺の町の空の季節に張り付いている為に、潮の香りが雨の格子に遮断され
届かず、コンクリートの地面に置きっぱなしだった音楽プレーヤーやCD、無
数の本の山がずぶ濡れに成って僕を睨み付けて居た。彼等は既に本来の機能を
失い、身動きする事すらできず、死んでしまって居たのだ。僕がもっと大きな
太陽だったなら、此の海辺の町の上空を覆う永遠の雨雲を掻き消して、君と嘗
て入り浸っていたラブホテルの床のカーペットのダニ共を焼き殺し、君の真っ
白な部屋の窓に光を射し込んで、僕と君の十代の頃の写真立てを照らし続けた
い。僕の心が静止し、僕の肉体が体を動かす事を欲しているならば、今直ぐ僕
は三日月の様な海辺の町へ向かい、浜辺で君の幻を掴まえ、僕は不揃いな瞼を
瞑り、君を抱き締めた後、瞼を開き、異国からやって来た紙の入った瓶を涙の
楽園で開けて、僕は眠る。其の紙に書かれていた文章は、夕暮れ時に光の波を
伸ばして僕に宛てられた本物の太陽からの物で、只、一言、こう書かれていた
のさ。「君の彼女への哀慕は必ず報われる時が来る」とね。