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transcendence

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「主観的」の意味を度忘れし、自分なりに意味を拵えてみる、すると頭に浮か
んで来るのは、湿気が多く、汗臭い薄暗い部屋と、赤いシャツ。僕の理想が怠
惰と二度目の健忘でいとも容易く崩壊し、空の雲間から光が射し込む。

未来の感情を何度も繰り返し体感する、ステック状の小麦粉菓子の一本橋を
渡る。喘息を起こした炊飯器が喉元に絡まった痰を鳴らし、烏の鳴き声に僕は
心を開く。不安がりながら、左手の人差し指と親指で体液を伸ばす。一文前の
感情を健忘している自分、刺激の無くなった目覚ましガム、泣き崩れる唄い手
の母親。才能の枯渇を恐れるアーティスト。

ピラミッドの内部の匂いを想像、満月から体液の様に冷たい砂漠に滴る、蜂
蜜。蜂蜜の唄。僕は君と此の唄を人生の応援歌として、君の知り合いしか居な
い土地へ、巣立ちしたい。思考を言葉に具現化させる事、人々の心に残る言葉、
詩を可能な限り、此の世に残す事、それが随分身勝手な僕の使命。積み上げて
きたものをゼロにして、まっさらな状態から詩を紡ぐ事程、気持ち良いものは
無い。聖者が無実の被害を被った時、僕の能力は冴え渡り、彼等からインスピ
レーションを得て、僕は一旦、健忘に陥るのだ。





 emptiness



僕は君の事が好きだ。柔らかな君の春の歌声が、僕の心をゆっくりと撫でて
いく。堤防の草の斜面で、君はアコーステックギターを弾き、僕は現実の時間
の流れ方を束の間、忘れる。そんな夢みたいな幸せを想うだけで涙が溢れてい
ただろう、誰も居ない、深夜の此の場所で。きっと。生きる為には天邪鬼でな
ければならない。君の孤独を噛み砕き、飲み込んでしまいたい。君がもし、「死
にたい」と僕に告げたならば、僕は君を殴り飛ばすだろう。そっと、世界の片
隅で君を愛して居ても構わないかな? 一緒に森の中へ入ってあげる、君が此
の世から居なくなったら、発狂してあげるよ。

こんな想いは保存すべきものではないかもしれない。二十.歳にも成って、
子供染みた小説なんて書いて居るのは馬鹿げているかもしれない。でもね、僕
の一番冷たいところが其れを欲しているんだ。抑制が効かない位。だから、こ
んな詩だって書くんだよ。本当は、君の唯一の友達に成って、其の境界線をい
つの日にか超えて、孤独な君を此の体で包んであげたい。静脈を温かいキーボ
ードの上に置いてみる。機械にだって、温もりがあることを、今知った。

森深くの老木に凭れる君。其の姿を皐月の青空と共に写す僕。湖畔の洋館、
森の屋根から差し込む日差し、生温いホット・ミルクと老い耄れたグランドピ
アノ。僕は此の想いを永遠に胸の奥に仕舞っておこう。夜からの脱却、君はと
っても素敵。過去を嫌いに成らないで。僕の詩なんかより何倍も深みの有る、
君の歌詞。僕は作詞家には成れなさそうだ。笑。僕も本当のところ、友達なん
て一人も居ないし、欲しくないんだ。僕の人生の目的とは只一つ、僕の詩で、
今まで救われた事の無い人達を救う事だ。僕は此の詩を読んでくれて居る、誰
よりも不幸な人生を送って来た。だから、僕は読者の不幸をある程度察するこ
とができるのさ。だから、僕は此の作品を読んでくれて居る、人達に助言する
ことができる。「不幸な事は、?本当に不幸な事じゃない?」ってね。?本当
に不幸な事?って、本当は僕しか体験した事が無いんだよね。

蜜柑のゼリーが僕の胃の中で消化されていく。其れは没する夕日の様。君に
再会できる事は二の次でいいのだけれど、僕の頭の中は常に君の事で一杯だ。
今日も一日、君に似た女性に心惑わされたけれど、悪魔の様な男に心を近付け
そうになったけれど、僕はやっぱりそのまま其の女性に心惑わされ、其の男の
操り人形に成ってしまうのかもしれないね。熱から覚めて、糸から逃れて、冷
たい無に直面した時、僕はまた君の事を想える事ができるのかな?

君と初めて逢う日、其れは小春日和、風は無く、僕は盲目に成る程涙を溜め
て、鼻水を啜りながら君に一番似合う花を持って公園のベンチで待って居る。
君は可愛過ぎる程笑みを浮かべ、公園のベンチへ、長く美しいスカートを穿い
てやって来る。僕は其の日が来る事を今から涙を浮かべ、鼻水を啜って待って
居る。水風船が弾けても、覚めない現実が欲しい。僕は君と永遠を誓う事がで
きるかもしれない。燃え上がる情熱と運命と洋館。僕の詩作の森は僕が亡くな
るまで続き、死後の夢を毎夜みる日々の苦痛は、君に会えない事よりも辛い。
君に似た女性と会うのが辛い。もうすぐ会えなく成るのが辛い。君に会えない


事よりも辛く成るかもしれない。此の想いは末期、恋とは死に至る病である事、
君の歌声が僕以外全てにとって害ではない事、僕の今の心は空っぽだという事
…。





 import



地図を広げた意志、君を愛する人よ、幸あれ…。暗闇の冷たい森、僕は君の
唄を歌いながら、押し寄せる波を掻き分ける様に、藪の泡を突き進んで行く。
夜には絶望しか潜んでいない。僕が死んだ時、悲しむ人はいるのだろうか?
僕が死んだ時、喜ぶ人の方が多いのだろうか? 自獄。君の笑顔が見たい。

 萎びれた心にはもう、向上心が無くなってしまったのかもしれない、空っぽ
な心にはもう、生きる意思が残されていないのかもしれない。只、僕は胸の奥
の痛みと、涙を堪えながら君の唄を聴き、歌うことでしか此の先の人生という
道を進む事ができないし、夜の絶望に飲まれて窒息死してしまうだろう。TV
の無い書斎、君の声だけが満ち、心に漂う暗闇の流れに任せて、瞼を瞑り、運
動不足の精神の筋力を強化する。いつか、君の前でもユーモラスな性格を演じ
るかもしれない。でも其れは、本当は、本当の僕ではなくて、胃の痛みに耐え
ながら、眼球の一部が此の世の暗闇と同化して、今にも消えそうな、死への恐
怖に脅えて居る、情けない僕なんだ。太陽が沈んで行く、其れだけで此の世の
儚さを痛感してしまう、センチメンタルな僕なんだ。

常夏の半島。潮と太陽の光の匂いがきつく、黴臭い.の匂いが一切しない、
馬鹿らしい無駄な記憶を、一時的にでも掻き消してくれる海の街。面皰のよう
な怠惰な痛みを伴う、瞼に創作活動を阻害されてしまう、太陽に見捨てられた
そんな夜々。熱帯魚が右手首の静脈を噛み、其処に打僕した様な痛みを停滞さ
せる。死んで逝った人々は何処へ向かうのだろう、僕の故郷の堤防に似た、其
の上を、青白い、夜空の様な顔色をした人々が東から西へと、行進して行く、
そんな小説のワンシーンに似た夢をみた。其の翌朝、躊躇いがちに流れて来る、
君の歌声にふと涙した。

ずっと永遠に君の唄を聴きながら、此の詩を書いて居たいけど、一度行間が
広がって行く錯覚に陥ってから、此の想いを文字にして書き殴る現在がいつま
でも続くとは到底、思えなかった。日々は過ぎ去り、想いも度々更新されてい
く。でも…、君が何処かの高級ホテルの朝食バイキングで焼き立てのクロワッ
サンを食べながら、紅茶を啜り、緑色で統一された庭にしとしとと降る.を見
て、儚さ、虚しさを感じ取れる女性ならば、僕はいつの日にか、君と一緒に成