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transcendence

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交通事故に遭う位の絶望だ。苦しい、悲しい、一発屋の作家や芸人等、僕の絶
望に比べたら、まだ二発でも三発でも夏の夜空に花開く事ができる。愛だの、
恋だの、軽々しく説く奴に言ってやりたい、「君は将来、キリギリスだよ。間
違いない」と。

物干し竿に干され、其の左端を持ち上げると、右斜め下に流れて溜まってい
く芸人達。僕の心は引き抜かれ、一瞬にして胸の周りが乾いた土の塊と成る。
面皰の潰れた箇所から黴菌が入って来るのが痛みで分かる。やはり君に僕は相
.しく無いのか。僕は同い年の君と、結婚したい。郵便ポストの朝、魔女のジ
ャム、江戸川乱歩。胸の流れ、瑞々しい.月の太陽の光、ノートに押し付ける
シャープペンシルの芯。全ては僕の両耳のアンテナから収集した、いつの日に
か失われてしまうであろう、あの.年の頃に浴びた風だ。

 疲れ果て、一度も発散したことの無い、君への欲望は、既に肘関節の辺りにま
で来ているが、君に彼氏がいるのだと誤信してしまうと、先程の様に、天と地
が真逆に成るのだ。君の子供のパパに成りたい。見かけに騙されがちな僕だか
ら、此れ以上の幸せを摂る必要等無いかもしれない。中心を中心とした鉄棒を
無重力でぐるぐる回り、僕は君の職場へ就職できる事を、どんな事よりも望ん
で生きて居るのは、やはり、僕は君の事を愛しているからだろう。運命等とい
うものに憧れる事は無いが、季節が春から夏へと形を変えていく時、僕は、君
への誤信を解く事ができるのだろうか、それとも、其れを抱いたまま、再び死
者を愛する病に取り憑かれる事になるのだろうか?





 emancipation



雲を吐き出す煙突、真夜中の詩作。決して肉体的に健康的では無いけれど、
僕の精神にとってはきっと、この上無く良い効力が齎せるに違いない、呪われ
たウォークマン、苦虫の様な路上の煙草、宇宙の様な頭痛、此の想いを包み込
んでくれる、色取り取りの包装紙……。忘れた頃にやって来る悪夢。野外ライ
ブのピアニストの心をどんどん、と打つ様な、僕には好きな人がいるから──
貴女の命の風、塞がる事の無い心の褥瘡、曇り空の海辺の孤立。冷え切った詩
作中の僕の感情。冷徹な視点で他人の思考回路を暴くのは僕の役目である。鍾
乳洞の光、途絶えた心臓音。

閻魔を見放す、負けず嫌いなドストエフスキー。彼は基督。嗚呼、枯葉を含
んだ木枯らしが僕等の目の前を通り過ぎて逝くよ……。理論的に言って、僕は
ショパンを、稲光を、イジメを…。噛み砕く拳、零カロリーのサイダー、思考
しろ、思考しろ、思考しろ!! 君を守っていく闘争本能だけは今、確信でき
たんだ、先入観の不可思議、馬鹿らしさ。

適度にワールドアレンジ、適度に自制を、貴女のケースの上の太く、短い日
本人男性を皮肉った蝋燭、言論・思想の自由等嘘っぱちだ!! 僕は此の胃液
を止めて、君を愛したい、マインドコントロールされた旧日本軍人……。涙す
るランボオ、瞼を閉じても取れない疲労、慌てて目盛りを下げた暖房機。黒い
妄想を払拭する為に、友人の気の利いたメールを破り捨てる。

大きな揺り籠の中で眠る僕、君、僕達の子供達。郊外に広がる無秩序。君と
会った後はいつも胸が痛く成る。発狂しそうな位、推し量る事はできない、苦
しい夜明けと詩作。舌を火傷させてしまったホット・カフェオレ。僕は君の為
に、此の唄を歌いたい。喫茶店のメニュー表をブーメランの如く投げ、頭の悪
い頭に此のおこがましい詩を読ませてやりたいのだ。

六十歳を過ぎたら此の仮面を外そう。そこまで僕や君が生きて居るかどうか
分からないけど、もし生きて居たら此の憑依から脱自できるだろうか? 幽霊
を昨日、二度、今日は四、.回は見た。死ぬ価値の有る人間は早く死んだ方が
良い。そういう者は誰にも愛される事無く、?死ぬ?為に生まれて来たのだ。
早く死んでしまえ、皆が其の者に望んで居るのはそれだけだ。死ね。

無言の会話を時々君とする。ゆっくりと流れる世界。僕はそんな至福の時で
さえ、寧ろ死んでくれた方が人類にとって有益な人間の行く末を考えて居る。
そしてこのまま意識を失い、眠りに就けたらどんなに幸せか、どんなに心の褥
瘡を.しでも癒す事ができるか夢見て居る。気が付けば隣に君が座って居る。
そんな僕にとっての夢物語を僕は実現させたいのだ。

体温程のホット・カフェオレを飲み干し、一時期はショぼい、と絶望した貴
女の唄から輝かしい未来の風を読み取って生きて居る。別れを決意した瞬間か
ら、長い呪縛から解放された様な快感を得、このまま、Tシャツとダメージジ
ーンズだけで其の風向きへ向かって走り出したい、この詩は僕にとっての自由
の獲得の証しである。心の荷物(負荷)は軽く成り、君達と空に浮かべそうだ。
背筋を伸ばし、唾を飲み込み、君の事を考える、君と会えない夜明け。きっと
君の運命に依って、僕達は出会い、僕に無限の可能性の有る、幸せを与えてく
れた者が居るのだとすれば、僕は初めて其の他者を信じるよ。





 amnestia



明瞭ではない、記憶のあの唄を頭の中で流す。僕の心臓を二段階ばかり、.
化させるけど、僕は無理をして、あの唄をよく聴いていた。無意識下では本能
が独り歩きし始めて水分を摂っていたらしいけど(テーブルの上のコップがそ
の証拠だ)、今日君に会う、会う度にどんどん真実が明らかに成って、君を好
きでいることを諦めてしまうかもしれないね。そんな事も大きな心で全て包み
込めたならば…。此の肉体は骨の髄から冷えて居て、生々しい憎しみの感情と
共に何時か、鈍器に成らない事を願う適当な自分に嫌悪を抱いてしまう。

どうしたら此の唄の歌詞のような優しい心を抱く事ができるのだろう?
基督、ドストエフスキーの様な温和な心で居られるのはひどく難しいものだ、
ひどく酸化した本の匂いに嫌悪感を抱くのは僕が貧乏に慣れていない為で、早
朝の空の蒼さをたった一人で見上げて居ると、随分歳をとった過去が「御久し
振りです」と、僕の記憶を呼び覚ます、あの日の早朝の空もこんな色だった、
そして愛らしい君に似た、此の声の主に今、心を癒してもらっている。

此の唄を聴きながら、数ヵ月後、素敵なシャンパンで君と一緒に幸せな時を
過ごしたい、それが無理だと分かっていても、そう願うのは悪い事じゃないで
しょう? だから僕は此の唄を何度も繰り返し聴きながら、そんな夢想に浸り、
今日、何もかも理想的な、だけど此の醜い心で、其の一割方を蔑みたい、対等
であるようでいて、実は総合的に君の能力を上回っていたい、そんな安堵感を
求めて、君に朝の挨拶や、些細な質問を投げ掛けてしまうのだ。

洗い浚い、此の醜く卑しい心を浄化させる為には、あと、二十数年はかかり
そうだ。其の頃、僕は一体、何処の誰と些細な幸せを育んでいるのだろうか?
其の、何処の誰かが君だったら、此の唄うたいならば、僕は今、どんなに幸せ
だろう? 詩とは、洞察の深化の結晶である、睡眠不足で痛い瞳を瞼で覆い、
ふと或る時、瞼を開いてみる。ちぐはぐな、パッチワーク的な自作品に絶望、