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MARUYA-MAGIC

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点ける音と、狂ったように泣き叫ぶ声が此方の部屋に聴こえてきた。僕はすぐ
にマイクで上司に、「ダイナマイトに火を点けました!!」と報告し、叱咤さ
れながらベランダへ出て柵を伝って隣のベランダへ移り、窓硝子を足で叩き割
り、太股をその硝子の破片で切りながらも.内に入った。そして目を真っ赤に
充血させて小便を漏らし、床でじたばたしている親分が目に映った、僕は彼の
体からダイナマイトを引っ剥がし、一四階のベランダから彼を抱き抱えて飛び
出した瞬間、大きな爆発音が鳴り響き、爆風を浴びて地上へと落下したが、下
で安全マットを.いてくれていた地元の警察隊の人達のお陰でマフィアの親分
を無事に逮捕することができた。手当てを受けた後、上司から受けた新たな仕
事の為に、僕はすぐにフィウミチーノ空港に向かい、チリに向かって飛行機は
出発した。











花束の花畑



僕の中の君と花束の花畑を何処までも何処までも駆け抜け続ける。もう何度
色鮮やかな花束の花畑に満ちた地球を回り続け、色覚が狂わされただろうか。
数え上げればきりがないが、この果てのない花畑にはこの世の全ての花が幾末
も咲いている。そして世界には僕と君しか人間という動物は存在しない。僕達
は色取り取りの花束を一纏まりとし、それらが無数に群がっているのを見て、
「僕達はようやく天国で永遠の命を手に入れられたんだ」と今思うととんでも
ない錯覚を起こし、朝食を食べ終えると朝早くから丸太小屋を出て駆け続け、
昼食にはその丸太小屋にあった食材で作った君の昼食で腹を満たす。そして満
天の星空が出てくる頃になると、また新たな丸太小屋があるのを見つけ、其処
で夕食を食し、シングルベッドの中で君と抱き締め.いながら幸せな夜を過ご
し、深い眠りに落ちる。そして次の朝、再び朝食を食べ、昼食の準備を一緒に
手伝い、まだ太陽が地平線の彼方からいつものように昇って来る前に、丸太小
屋を出発する。僕はふと思う。僕達は一日で地球を一周しているのではないか?
と。僕達が花束の花畑を駆けている間に何者かが食材を補充し、シングルベッ
ドの皺の付いたシーツ等を取り換えてくれているのではないか、と…。何故な


らどう考えても、毎日同じ速度で駆け続け、いつものように満天の星空が出て
くると、時宜良くそれと瓜二つの丸太小屋に辿り着くからである。

ある夜、君とシングルベッドで就寝する前に、小屋の中に置いてあったナイ
フでこの建物の屋根を支える太い丸太の柱に僕と君の名を刻み付けておいた、
そして、次の夜再び昨晩と瓜二つの丸太小屋に入り、丸太の柱を見てみると、
鑢をかけられたのか、僕と君の名前は綺麗に消えていた。が、その名前を刻み
付けた丸太の部分が、他の表面と違い、明らかに色が薄くなっていたので、僕
達は、これまでの間ずっと、同じ丸太小屋で夕食を取り、眠りに就き、朝食を
食し、昼食の準備をして花束の花畑を駆け続けていたことに気が付いたのだ。
僕と君はひどく混乱し、色々と話し.った結果、この世界の円周は六十?程し
かないことに気が付いた。そして、次の日から今までとは違う方向へ駆け出し
て太陽が地平線に沈み、満天の星空が姿を現す頃になると、何故か再びあの丸
太小屋に辿り着くのだ。その試みを何度繰り返したことか。結局僕等が出した
結論とは?この丸太小屋こそが世界の中心なのだ?、ということだった。そし
てその日を境に、僕達は外に出ないようになった。僕と君だけの世界であるは
ずなのに、この丸太小屋に食料や整頓をしにやって来る?第三者の人間?とは
一体何者なのか暴く為だった。僕と君は何日も何日もその丸太小屋に留まって
いたが、一向に誰も現れることはなかった、食料も尽きて、シングルベッドの
シーツの皺も増えてきた頃、僕はある時悟った。?もしかしたら、その第三者
は僕達が此処に留まっている間は、決して姿を見せてくれないのではないか?
?、と。その次の日の朝、僕達は空腹を堪えながら一日中花束の花畑を駆け続
け、夜になって再び丸太小屋を見つけると、すぐさまその中に入り、たっぷり
と備蓄されている食料が目に入り、すぐに君が料理を作ってくれて、今までの
空腹を満たす為に何皿も何皿も夕食をお代わりした。そしてそれから暫くして
眠たくなってくると、君と一緒に、皺が一筋も入っていないシングルベッドの
中で抱き.いながら眠りに就いた。

現在、この文章を書いている数時間前まで、僕達はこの小さな世界を一周し
ていた、?生き延びる為?に。ただ、それだけの為に、明日も花束の花畑を君
と駆け続けるのだろう。











We live on the dead road.




僕達はただ、梅.の、晩秋の、生温い/凍える冷たさの、放射能や強酸の含
まれた.から身を守る為に傘を差していて、頭の中にあるどす黒く変色した雲
を掻き消そうとは微塵足りとも思わない。僕達は哀愁に溺れたくて「死」を頭
のどこかで渇望している。他者に言い咎められない程度に。「死」ぬことに対
して、高揚を覚えるのは強ち出鱈目ではないだろう。

僕達は心の底で絶望の重力に打ち拉がれ、両手と両膝を付き、ひどい睡魔に
襲われ、末当の「死」への引力に、つまり心に吸い込まれそうになる。そんな
時上空を見上げればやはり人間の姿にしか?なり得ない?神様が浮かんでいる。
そのお方は言葉でもあるし、母宇宙でもあるし、文字でもいらっしゃる。僕は
またこの文章を書くのだろう。そして?またこの文章を書くのだろう?、と再
度書くのだろう。それらの繰り返し。

眠気を珈琲で食い潰して、詩作に励む。ねっとりとした何かの.練が僕の目
の中で周回している。僕は自分の苦しみしか書かない。というより、愛する女
性と再び巡り会うまで、僕には他人の苦しみを書くことは恐らくできないだろ
う。というより、完璧にそんなことができる人間ならば、この詩集が発売され
て百年以内に聖書よりも売れるだろう。

晩秋の凍える冷たさの、.の中、僕は東京の公園のベンチに座り、眠気を食
い殺す為に、熱い缶珈琲を飲み下し、眠気覚ましガムを四枚噛みながら、詩作
に耽っている。「死ぬ」か/「苦しむ」かどちらかだ。僕は体をがたがた震わ
せながら、耐水性のノートに、詩を綴っている。公園と珈琲と眠気覚ましガム
を買ったコンビニの間の二車線の道路を、死者を乗せた車が激しい水飛沫を上
げ、横断歩道を渡る黄色い帽子を被った死者達を次々と轢き殺している。道路
は増水しており、此方の公園が左岸、あちらのコンビニの駐車場が彼岸。…ど
ちらの国ももう悲観的に滅びたも同然なのだけれど。

空白と強烈な眠気と、空白に対する積鬱、突然の名案でチョコミントアイス
を食べて眠気を吹き飛ばす現.、これこそが現.だ。口の中も頭の中も爽やか、
要らぬ性欲も失せた、1992年の市営プールでの孤独。僕は一生忘れない。
僕の人生の中で故意に掻き消さない限り。ずっと付き纏っていた孤独の霧。僕
はどうして素直に生きることができなかったのだろう?