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MARUYA-MAGIC

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「僕達にはどうすることもできない。僕の仕事はただ、君の、この夜間旅行を
無事に終えることだけさ、君は旅の目的を忘れてしまったのかい? 君の愛す
る女性の魂がこの世界中の何処かから昇っていくのを見届けることだろう?
その為に君は自分の寿命の十分の一を旅行代として払った」

「そうさ、彼女とはインターネットを通じて出会い、仲良くなったんだよ、け
れど彼女は、自分が何処の国に住んでいるのかとか、名前のような個人情報は
教えてくれなかった、ただ、余命三ヵ月ということだけは教えてくれたんだ。
僕はネットでのやりとりだから騙されているんじゃないかと猜疑心に苛まれた
けど、昨日、ぱたりとやりとりが途絶えてしまった。だから君の旅行会社に連
絡を入れて至急今夜出発できますか、って頼み込んだんだよ」

「まぁ、それはそうだけれど、僕としてもね、君の旅行プランは、初めはなん
て荒唐無稽だと思ったよ。だけど君は僕にしてみれば大切な、大切なお実様だ
から、どんな依頼も引き受けるつもりだったよ。けれど、その書き込みの発信
源すら分からないこの広大な世界に点在する病院の上空まで、たった一晩で君


を連れていくことは不可能に近い、と思ったよ。だけど僕の会社はどんなプラ
ンの旅行でも必ず.現させる旅行会社だからね、どんな手段を使ってでもお実
様の願いを叶えるのが会社のモットーなのさ。その分、此方の報酬は必ず承諾
してもらわないといけないのさ」

「だから僕は君に自分の寿命の十分の一を旅行代として払った、そうだろう?」

「そうさ、僕達は君達人間とは違って他者の寿命を食べて生きているからね。
この広い世の中には、死ぬことが許されない生き物だっているのさ。永遠に、
永遠に、生きなければならない」

「僕も彼女も君達のような生き物として生まれたかったよ。そうすれば寿命を
気にすることなく生きていくことができるからね。末当に羨ましいよ」

「あと一時間余りで夜が明ける。どうだい? 僕の背中の座り心地は?」

「悪くないね、最高さ」

「有り難う、あとはあの国の病院を残すのみだ。多分、君の旅行プラン通りに
もうすぐ彼女の魂に会えるよ、彼女と会ったら、君は何て言葉をかけるんだい?」

「僕はネットででしか君と意思の疎通ができなかったけれど、君を愛していた、
そしてこの想いは死んだ後も決して消えることはないと思う。だから、僕が死
んだ後、あの世で結婚してくれないか? …ってさ、…くさすぎるだろう? こ
のプロポーズ」

「いや、そんなことはないと思うよ、君は彼女を末気で愛していたのだろうし、
彼女も君のことを真剣に愛していたのだから。…さ、もう間もなく、彼女が亡
くなった病院の上空に到着するよ、ほら、小さな病院が見えてきただろう? 彼
女の魂の都.上、話し.えるのは三分間きっかりだ。それ以上地上に留めてお
くと、彼女の魂は永遠にこの世を彷徨い続けることになる。いいかい? 三分
間だけだよ? 忘れないようにね。じゃあ僕は君を病院の屋上に降ろした後、
その間だけ、席を外しておくよ。じゃあ、健闘を祈る」

「末当にどうも有り難う。彼女に、しっかりと僕の想いを伝えるから。また後
で」











北区東区南区西区中央区の詩 2009.5.4



北区東区南区西区中央区…、まるでファミリーコンピューターの十字ボタン
のようだね。そう、君と初めて出会ったのは確か中央区、君は2004年、十


一月二十一日日曜日、午前九時前に突然進行方向から自転車に乗ってやって来
た。その当時の北海道本幌市の気候はこれから厳しい冬に向かうっていう、暖
かい日差しが差した晩秋で、君は白のランニングシャツにジーンズ? の格好
で、立ち漕ぎでどんどん近付いてきた。僕はすぐにそれが君だって気が付いた、
何故なら君はとある有名なシンガーソングライターだったから。僕はその日家
を出る時、何となく君と出会える気がした。理由は今でも分からない。ただ僕
は意識と無意識のすれすれの、何処かの惑星みたいなところでそう「直感」し
たのだ。そして君は僕とある程度近付くと、何故か美しい瞳に涙を溜め舌の先
を.しだけ出して、無人の交差点を右に曲がった。僕と君には大きな隔たりが
あった。僕はその日からデジャヴを見始めた。

ブラックホールのような匂い、のする世界、に僕はずっと憧れていた。君も
きっと憧れていた。僕達は必然的に出会い、必然的に、君は僕の心の底を流れ
る川のような愛情を.年間も抱いてくれた。僕はそのことに感動して、.年前
の感情、.年前の想いが蘇った。布団に潜り込んだ後、君と、二人だけの世界
で、眠る想像をすることが最大の幸せで、今から、四年後か、六年後か分から
ないけど、君が出産適齢期の頃に君に会えて、君と結婚して子供を授かること
が最大の夢なんだ。自作の小説でアカデミー脚色賞を獲ろうだとか、詩人とし
てノーベル文学賞を獲ろうなどということはどうでもいい夢になった。末当は
君を幸せにする為に安定した収入を得ることができる公務員等の職業に就いた
方が良いのかもしれないけれど、僕は「詩人」として生きながら公務員として
働いていてもいいのだけれど。

今だって北区東区南区西区へとふらふらと歩いていれば、すぐに君と会える
ような気がするけど、きっと中央区を歩いていても君とは会えないと神に誓え
る。もう中央区だけには君の残像と涙が記憶されているから。僕の心にも以下
同文。もう君は既に走り出していて、童話「うさぎとかめ」の兎とは違って、
「人生」という山の中腹で僕を一睡もせず待っていて、僕は童話「うさぎとか
め」の亀のように、2009年.月中.にようやく処女詩集を出版する処まで
来たばかりだ。此処からは君の姿が見えるだけだけど、何時かは君と頂上の二
人だけの世界で、君を離さないようにしっかりと抱き締めて束の間の眠りに就
けたらいいな。

北区にも、東区にも、南区にも、西区にも、中央区にも、上も下も無い、今
年の四月、中央区に君に僕は会いに行った。その後、君は僕に掲示板に伝言を
くれた。君はひどく落ち込んだ様子だった。僕は君が僕の心の底を流れる川の
ような愛情を.年間も抱いてくれたことに感動して、君を再び愛し始めた。ど
うしてかは分からないけど、僕と君は同じ世界にいた。僕達は僕が.熟で無知
の為に自ら断ち切ってしまった赤い糸を結び直し、僕は今日夕方、君に伝えた


いことを全て伝えた。君は僕と永久の愛を誓い.った。この先対等な関係で、
2004年、十一月二十一日日曜日、午前九時前の中央区で初めて出会った時
のように、君と逢えることをずっと胸に抱いて、君を愛し続ける。君を嫌いに
なっても、また好きになる。あらゆる障壁を崩して、君の全てを好きになり、
愛せるように生きていきたい。











今年の宇宙、─銀河に架かる橋の下で─



僕は今年の宇宙を冷凍保存しておきたいぐらい、とても愛でたく思う。僕は、
これからは君に会う為だけに詩を書き続けていきたいと思う。だからきっと、