MARUYA-MAGIC
たというのなら、完璧に頭が狂っていやがる!! 当然その言葉を鵜呑みにし
ているアンタもな!! 此処から動くな!! 今から警察を呼んでお前達のふ
ざけた対.について厳重に注意してもらうからな!!」と私は鞄から携帯電話
を取り出し、110番すると、数分後に二人組の警察官がやって来た。私は彼
らに事情を話し、この場所に医者も連れてくるように要請した。警察官達は頷
き、一度薬局を出て病院へ向かい、問題の医者を連れて来た。その間に処方箋
を持ってやって来た他の患者達が薬局内に溢れ、何があったのだろうと、近所
の野次馬達が薬局の周りを取り囲んでいた。私はきょとんとした表情の医者に
最終通告として、「末当にこの薬は、就寝後、起床前に飲むものなのですか?」
と怒りを抑えながら訊ねると、医者は、「えぇ、その通りです、先程薬剤師と
電話で話した時もそう話したでしょう」とまるで私が悪者のような口調でそう
答えた。私の怒りは頂点に達し、二人の警察官と医者と薬剤師に、「私の体を
他の病院でもう一度診察させて下さい! そしてもしこの医者と違う診断結果
が出て、就寝後、起床前に飲む薬など出されなかったら、この詐欺師共を逮捕
して下さい!! 全く何て奴らなんだ!! こんな所に二度と来るものか!!
私はこの風邪が治ったら、貴方達を裁判で訴えますよ!! もう謝罪したって
遅いぞ!! そしてお前等は医師免許と薬剤師免許を剥奪されて路頭に迷えば
いいんだ!! せいぜい自分達が犯した罪に苛まれながら首を洗って待ってい
ろ!! ハハハ!! ハハハハ!!」と言い残し、薬局を去った
しかしその後の私にはとんでもない事態が待ち受けていた。行く薬局、行く
薬局全てで「この薬は?就寝後、起床前?にお飲み下さい」と説明を受け、そ
の度に警察を呼び、担当医や薬剤師に真意を問い質したが、結果は毎回同じこ
とで、その薬を飲まないばかりに一向に風邪が治らなく、ついに私は九十九件
目の薬局で病気が悪化して倒れてしまった。私はそのまま大きな病院に運ばれ、
「重症な肺.」と診断された、私は百件目の病院の担当医に、意識が朦朧とし
ながら、「どうすれば私の体は回復するのでしょう…?」と質問すると、その
担当医は、微笑みながら、「この薬を就寝後、起床前にお飲みになればすぐに
良くなりますよ」と言うと、私は全身の血の気が引き、激しい混乱状態に陥っ
たまま精神病院に搬送され、其処で「肺.」の為、没した。今あの世で思うこ
とは、私が「就寝後」と「起床前」に誰かに「その薬」を飲ませてもらえば良
かったのだと後悔している。どうしてあの時、私はそのことに気が付かなかっ
たのだろう?
他人の空煮
※「他人の空煮」の作り方…材料 あらゆる点において自分と瓜二つな人間
一人…、まず自分にとても良く似た人間を一人、世界中から探し出しましょう。
上手く探し出すことができたらもう、「他人の空煮」ができたも同然です。そ
の相手がもし異性なら尚更完成度が増します。次に、その相手と深い意思疎通
ができるような親密な関係になりましょう。肉体関係にまで発展すれば言うこ
となしです。
そうしてとうとう調理の段階に入るわけですが…、.はここの段階でこの「他
人の空煮」を作るのを挫折してしまう人が圧倒的に多いのです。何故かという
と、肉体関係まで発展した相手を「空の釜で煮る」ことなんてできないからで
す! それに加え、もう子供まで「できて」しまって、「他人」ではなく、「家
族」となってしまったからです! 一体誰が愛する相手を「空の釜で煮る」こ
となんてするでしょう! そんなことをすれば…、いや、この場.の話はテレ
ビの前の皆さんには容易に想像がつくので止めておきましょう…、これまでで
御気分が悪くなり、やっぱり「他人の空煮」なんて作るのは止めた! という
考えに至った方は、黙ってテレビのスイッチをお切り下さい、もし…、もしで
すよ? 其処のテレビの前のあなた…が、無意識に湧き出てくる欲望により、
「…やっぱり他人の空煮に興味がある…」、と思わず「涎」が出てくるのであ
れば、このまま番組をお楽しみ下さい…。
…さて、心の準備は宜しいでしょうか? それでは完成までの過程をお教えし
ますよ? メモの準備は宜しいでしょうか? まず、しっかりと熟した「あな
たへの愛」をもったお相手を、「他人」と完全に認識し直して下さい。それで
ないと後で恐ろしい後悔と罪悪感の波が押し寄せて来ますから。警察署の取調
.で供述する時、「殺人者」として平静を保っていられなくなりますからね。
次に、その「他人」の隙を突いて身動きが取れないように荒縄などで全身を縛
り付けます、もし「慈悲」がある人は、初めに目を布か何かで覆ってあげると
いいのかもしれません。そうすればその「他人」は、まさか「自分の愛する相
手」が、自分を殺そうなんて思うわけありませんからね。しかし、末格的な「他
人の空煮」を作りたいのであれば、その「慈悲」をも黙殺する程の「再認識」
と「平静さ」が必要なのです。
まぁ取り敢えず、此処では「目を覆い隠さない場.」で.際に「調理」して
みましょう。今、私の隣に立っているのは、私の「かつて愛した相手」で御座
います。この「材料」は涙を浮かべ、小便を漏らし、私の方を見て、がたがた
震えていますね。さて、そろそろ釜も温まってきたようですね。では早速、「入
れて」みましょう。どれどれ…。私の忘却した愛情を燻るような哀願のこもっ
た悲鳴を上げていますね。中々良い焼き色加減です。裏面も万遍なく火を通し
ましょう、そろそろ完成…、と言いたいところですが、まだ「材料」は息があ
るようです、どうして私達は、魚介類等は平気で生き殺しの料理をして食べて
も罪にならないのに、人間なら罪になるような法律をつくったのでしょう?
すみません、話が.し逸れてしまいました。「材料」の水分が全て飛ぶまで煮
詰めましょう。何故だか先程から、私の涙腺が緩んで視界がぼやけてきました。
「玉葱」など.めているわけでもないのに…、遠くからパトカーのサイレン音
が聞こえてきましたね。…おや、もうそろそろ完成のようです。今日のところ
はこれまで。また、「三十分前の現世」にお会いし致しましょう、それではさ
ようなら。
春.
染五.野で満たされた町の片隅で、負の気温の中、.が降る。僕は砂利の空
き地に佇んで君を想い続けている。腫れ上がった瞼の奥の瞳の視線が、眠気の
膜を破って冷え切った現.を見つめている。意図的にではなく無意識に、空を
仰ぎ、瞼を瞑れば涙が溢れてくる。君は、君は彼女達のようにまだ死んでいな
いのに、この町の僕の存在の.が暗闇に飲まれ、掻き消され胸の奥の小さな痛
みを切に感じている。暗闇を見つめている自分にもう一人の僕は、自惚れ屋で
あると冷たく突き放し、その結果白けてしまった僕は君を想うことを一度止め
る。
東京にいる君の曲を聴きながら、淡い桜色の森の中へ入る。両手の十末の指
作品名:MARUYA-MAGIC 作家名:丸山雅史