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MARUYA-MAGIC

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いるようで、その木材の質感や取っ手の温度などを無意識のうちに考えている。
要は相当な暇人というわけだ。因みに僕は七年前から、食事は夕食しか摂らな
いことにした、あの可愛らしい犬と同じように。もしかしたらあの犬は、僕が
眠っている間に、三食分の食事を摂っているかもしれないが。このように僕の
この大聖堂に関する様々な疑問は尽きることを知らない。しかし、と僕は最近
考える、あと一年、あと一年以内に僕があの大聖堂の扉を?開く?ことができ
なければ、きちんと社会に出てまともに働こうと思う。どうしてそんなことを
考え始めたのかと訊かれれば、やはり、?何事にも潮時が来るものだな?、と
悟ったからであろう。僕はもう、あの扉を開く代わりに、社会の扉を叩く時期
なのだ。











DOLLS



僕と君は両想いだという【夢】をいつまでもみていたいんだ。君の唄を毎日
口ずさみながら、愛を込めて人形を作り、誰も来ない店に並べ、ネットの掲示
板へ君への想いを綴り、君らしき人の伝言を何度も読み返し、安心と不安に苛
まれながら、床へ着く。そして毎日のように君の夢を見、いつまでも心が繋が
っているという【夢】から覚めないように掲示板を確認する。まさにネット中
毒患者だ。又は重症な妄想人間だ。

もし僕と君が店の片隅の棚の上に置いてある小さな二つの男の子と女の子の
人形ならば、どんなに幸せなことだろう。朝日が昇ってくると同時に僕達は光
のシャワーを浴び、ぽかぽかとした日溜まりの中で、互いの肩や頭をくっ付け


て、一緒にまどろむ。.の日は一日中窓硝子の涙を、この世の儚さを憂う.雲
が、空という涙腺を伝って流し続ける。僕達の心も小さく縮み、冷たくなり、
君が、僕がずっと一緒に傍にいてくれないと、兎のように寂しくて、切なくて
堪らなくなり、孤独死してしまうだろう。僕は男の子の人形に自分自身を投影
させて、また今日も実が来なかったなぁ、と思いながら、.粒の弾ける音に耳
を澄ませ、君の唄を口ずさみながら、人形を作り続ける。

その夜は、君の書き込みらしき伝言が載っていなかったので、僕は一気に【現
.】に引き戻され、失望感を抱いたまま、眠りに就いた。夢の中で、僕は店に
置いてあるあの男の子の人形の姿になっており、純白の世界の上に立っていた。
辺りも上を見上げても、全て純白で、突然上空から.粒が一滴落ちてきて、僕
の頬を伝い、地面に落ちて、波紋を広げながら消えていった。もしかしたら現
.の世界でも、世界の中心で誰かさんが涙を一滴、落として、その波紋が世界
中の浜辺へと押し寄せる波と化して広がっているのかもしれない。その小さな
波の行き先を視線で追いかけていたら、ある時女の子の人形の君の足元へぶつ
かった。僕は顔を上げ、.だ消えない静止した波紋の中を歩いていき、君のい
る場所まであと半分の所まで来ると、「君」は、左目に溢れんばかりの涙を溜
め、その一滴を、純白の世界へ落した。すると先程と同じように、その落下し
た涙を中心にして、波紋が広がっていって、静止した波紋の時間を動かし、二
つの波紋は交じり.って、幾つもの接点が隣同士のそれらと光の線を結びあい、
その線はやがて裂け目となり、其処から黄色い光が溢れ出てきた。するとその
裂け目から君の唄が聞こえてきて、僕達は足元を濡らしながら、その裂け目で
出会った。君はにっこりと微笑んでいて、その裂け目を中心にして、僕達は踊
り始めた、譬えこれが夢の中の【夢】物語だとしても…。その二つの内、僕と
君は両想いだ、という【夢】物語が偽りだったと分かってしまったら、僕はき
っと相当落ち込んでしまうだろう。

そこで静かに眠りから覚め、自分が不安定な感情に陥っていることに恐怖と
血の気が引く想いを抱き、ネットの掲示板の過去ログを開き、君らしき人間の
書き込みを何度も繰り返し読み始めた。真夜中の.は、.雲が憔悴し切ってい
ることが十分に推測できるようなまるで精根尽きたように降っていた。僕はそ
の伝言の返信として、百二十%の力でこの複雑な思いの丈を綴った。それには
三時間以上かかった。そしていつの間にか意識を失い、気が付いた時には店の
開店時間を過ぎていたので、僕は入口の扉を開けようと店の中へ出てきて、鍵
を開け、.上がりの初夏の青空を眺めていると、君に対する想いを、日光に当
たらないようにそっと心の襞の裏に隠して、いつものように君の唄を口ずさみ
ながら、人形作りに取り掛かった。












「就寝後、起床前にお飲み下さい」



風邪をひいてしまい、私は内科の病院へ行き、其処の医者に、「典型的な風
邪」と診断された。そしてその建物の隣にある薬局へ処方箋を持って入り、無
表情な薬剤師にそれを渡し、「暫くお待ち下さい」、と言われ、カウンターの
前にあるソファーに座り、スポーツドリンクや栄養剤の入っている硝子の冷蔵
庫に見入っていた。

やがて、「…さーん」、と私の名前が呼ばれると、「はい」とソファーから
立ち上がって、レジ寄りのカウンターに立った、すると薬剤師は淡々と薬の説
明を始め、横文字の薬の名前に頭が混乱しそうになりながらも、「はい、はい」
と知ったかぶりをして頷き、最後の薬の説明中に彼は、「このお薬は、就寝後、
起床前にお飲み下さい」と言って、その薬の束を紙袋に丁寧にしまい、入口を
折り畳んだ。私は、先程の調子で、「はい、はい」と半ば適当に返事していた
のだが、この時ばかりはその男の説明が頭の中で反芻して、「えっ? ?就寝
後、起床前?に飲むのですか?」と訊き返してしまった。

無表情な男は、私の質問を受けた後も、相変わらず無表情な顔をして、暫く
私の顔を不思議そうな目で見つめると、無乾燥な声質で、「そうですが」とあ
っさりと答えた。「就寝後、起床前って、私が眠っている間じゃないですか?
その間にどうやってこの薬を飲めばいいのですか?」と質問すると、男は「処
方箋にそう書いてあったので、私は貴方様にそうお伝えしただけです、何なら、
病院の先生に電話を掛けて、末当かどうか訊いてみましょうか?」と返した。
私は憤激し、「是非そうして下さい!、あの医者は一体何を寝惚けたことを言
っているのだ! 私を小馬鹿にでもしているのか!!」と男を叱咤すると、無
表情の男はそれでも表情を変えずに、「やれやれ」と愚痴を零し、面倒臭そう
に電話の受話器を取った。

男は病院に電話を掛け、医者らしき人物と暫く話し.った後、「わざわざど
うも済みませんでした」と言って頭を下げる素振りをし、受話器を置いた。私
は苛立っていたので、話し終えた男に、「で、先生は何と仰ってたのですか?」
と八つ当たりするように訊ねると、男は私に向かって頭を下げ、「やはりこの
薬は、?就寝後、起床前?にお飲みになって下さい、ということでした。それ
では有難う御座いました、えぇと、代金の方は二千…」「待って下さいよ!!
末当に先生は貴方にそのように申したのですか? ふざけるな!! アンタは


完全に私を馬鹿にしている!! もし仮に末当にあの医者がそんなことを言っ