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MARUYA-MAGIC

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豊かになる。空は四月下.特有の雲模様に包まれ、僕はそれに一種の哀愁を感
じ、藁の山に凭れかかって、これからの.来の夢をみたいな、と強く念じた。











長いお別れ



二月第一週の土曜日、僕は午前四時.十分の始発の列車に乗り込んで君の入
院している大きな都会に行く。駅に向かう途中にあった排水溝の溜息をふと思
い出す。汽笛が鳴り響き列車は出発する。都会に着くまでには四時間程度かか
る。窓硝子は外界の寒さと列車内の暖房による温度差で、真っ白く曇っており、
僕は窓硝子を擦り、もう二度と此処へは帰って来られないような心境でがらん
どうの駅と中年の眼鏡をかけた男性駅員を見つめる。もう一度汽笛を鳴らした
汽車は、徐々に加速していき、僕はマッチに火を灯し、中年の駅員は僕に特殊
相対性理論を思い浮かばせ、マイルドセブンに火を点け、レイモンド・チャン
ドラーの「長いお別れ」の単行末を読み耽る。

車内で朝食のサンドウィッチを食べ終わると、魔法瓶に入れてきたHOT珈
琲を、時間をかけてゆっくりと半分程飲む。外は誰かが天候の神様の機嫌を損
ね豪.が降り注いでおり、時々気持ち良い音量の雷が空を這った。君の街もき
っと.が降っているだろう。雷が這っているかは別として、完全なる予報外れ
である。僕は最近、携帯電話を紛失し、電話会社との契約を打ち切った。僕に
とって携帯電話など、もうまるで何も意味を持たないのである。ふとくだらな
過ぎて初めの数ページで読むのを諦めた日末在住の外国人作家の小説のことを
思い出した。あの末は家の何処へ行ったのだろう? まさか自分から家を飛び
出して、歩道から車道を飛び出して自殺するわけはないだろうけど、僕は「長
いお別れ」の途中で眠気を感じ、珈琲をもっと飲もうかと思ったが、もう一度
煙草を吸って、君の街まで着くまで眠ることにした。「夢」とは、生きる為に
無意識に働く脳の産物である、と君の街のとある大学で講義する、レイモンド・
チャンドラーが外見で、内面が僕である、「僕」の夢をみた

ふと意識が戻り、二月にしては暖かい、僕の瞼を赤く透かす日差しで瞼を開
くと、窓硝子の曇りが水滴となっており、すぐ近くに大都会が見えた。僕は大
きな伸びをし、もう一服して珈琲を飲み干し、下車の支度を始めた。大きな駅
に着くと、乗実が僕だけの列車の扉は開かれ、都会の生温く汚れた空気が吹き


付けてきた。僕は何だか僕だけ異邦人のような.等感を人混みから抱き、八番
ホームへ降りた。

君の入院している病院まで私電に揺られて、思わず胸が苦しくなる異次元の
世界のようなハリボテみたいな風景をぼんやりと眺めていた。病院前の駅で降
り、病院へ入り、君の病.に向かうと、突然君の病.の扉が開いて、君が複数
の看護師と医者によってローラー付きのベッドを駆け足で押され、集中治療.
へ運ばれる光景を見た。数時間後、再び.が降り始めた頃、執刀医が僕に君の
死を知らせに来た。

僕は最終の汽車で自分の町へ帰ることにした。病院前の駅で私電に乗り、大
きな駅から最寄りの駅で降り、そこからコンビニまで豪.に打たれながら歩い
て、そこで傘を買って、大きな駅に向かった。大都会のアスファルトは凸凹し
過ぎていた。その為に無数の水溜りができ、僕のスニーカーとズボン、特にス
ニーカーの中はぐちゃぐちゃになった。

ようやく大きな駅に着くと、切符を買い、今朝と同じように僕以外乗実が誰
もいない八番ホームに立った。やがて定刻通りに列車がやって来て、今朝と同
じ座席に座ってふとホームを見てみると、幽霊の君が立っていて、涙を流しな
がら僕に大きく手を振った、僕はその光景に釘付けになりながらも窓硝子を開
け、天国で再会しようという意味ではなく輪廻転生の未、この素晴らしき同じ
人生で再び巡り.えるという意味で、「長いお別れになるね」と大声で叫んで
涙した。











Lifetime Respect



「貴女」って、記さなければきっと貴女に失礼だろうけど、ここではやっぱ
り僕のこの気持ちをこの詩に全てぶつけたいので、貴女のことを、「君」と記
します。

君は僕の残りの八十年の人生を薔薇色に変えてくれるでしょう。そして僕は
君の残りの七九年の人生と共に生き、大往生の時に一緒に睡眠導入剤を飲んで
自殺します。死後の世界ではきっと天国と地獄に離れ離れになってしまうでし
ょうけど、それは「夢」をみている間だけの時間なだけなので、別に辛くも何
ともありません。僕は僕を一途に愛してくれている年下の女の子を知っていま
す。六月の.の大都会の路地裏の黒と鉛のツートンカラーに支配されているア


スファルトの上の感慨の空間が、その彼女と僕の秘密の場所です。君は末当に
僕を愛してくれているか僕には分かりません。その女の子のアコースティック
ギターの弾き語りと歌声は、僕のそんな内面に蔓延した不安感と虚無感の煙を
浄化させてくれます。でも僕の冷たい背中を暖めてくれるのは「君」から生ま
れた体温なのです。僕と君と彼女、とこの大都会の間には、百年の隔たりがあ
るように感じるのです。僕はその路地裏に捨ててある空き缶を噛み砕く恐竜の
ように、一生懸命詩を書いています。僕は「生きる」為に、詩を書いているの
です。

この歪な人生という「時限爆弾」に、尊敬の念を抱きましょう。何もかも上
手く行く人生なんて、陳腐な表現だけどつまらないものです。君のいる月へ上
る為に、彼女と世界一長い梯子を作って、無限に繰り返される人生を憂鬱と躁
の緩く長い波を上ったり下がったりしてこれからも生きていくのです。梯子の
完成間近、彼女を愛してくれる人が現れて彼女は夜の世界を離れます。ずっと
前と同じ結未です。僕はその時欲望の為に肥大した「独占欲」を鏡に見せつけ
られて、それをそれをそれをそれを破壊します。つい最近と同じ結未です。

完成した梯子を月に渡して、上へ、上へと上り続けます。そして七十九年の
歳月が流れて君と再会を果たします。いつものことです。とても悲しいです。
君はベッドの中で大往生を迎えようとしています。僕は君のベッドに入り、今
までの性欲が蓄積しているあまり、君を抱きしめようとするのですが、君の「時
限爆弾」というLifetimeは月を吹っ飛ばすまで残り僅かです。僕はこ
こでいつも迷います、「梯子を下りて残りのLifetimeを独りで過ごす」
か、「睡眠導入剤を飲んで君と一緒に死ぬ」か、どちらかを選ぶことを迫られ
るのです! 後者を選べば勿論死後の世界で君と離れ離れとなり、果てしなく
続く「夢」の間、ずっと地獄で地獄の苦しみを味わなければなりません。しか
し、と僕はいつもここでいつも考え直します。君は、君はこれまでに僕を末気
で愛したことがあるのだろうか??と、もう思考を後戻りする時間はありませ
ん! でも「今回」は、君と一緒に死ぬことは諦めました、よく考えてみると
いつもと同じ結果です。

月は大爆発し、その衝撃で夜には穴が空きました、僕は全生命体と共に、空