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MARUYA-MAGIC

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は、「お前といると、敵に見つかりやすいから早く此処から出て行ってくれ」
というものだった。僕は故郷を離れ、自分が蝶になるまでの我慢だ、その暁に
は、もう一度故郷へ帰って、仲間に入れてもらおう、そう強く誓った。

ある時、僕と全く同じ皮膚の色の君と出会った。僕達は顔を.わせた瞬間に、
今まで他者から迫害され続けてきたことを察知し、僕達は、蝶になって、羽で
自由にこの広い世界を飛ぶことができるようになったら、一緒に結婚して、子
供を産もうという理想を星が無数に輝く夜空を見上げながら、それに思い浮か
べていた。

僕達の旅は続いた。困難な旅だった。春が過ぎ、夏が過ぎ、秋がやって来る
と、僕達は皮膚が固まってきたことを感じ、同じ花の葉の下の茎に掴まって、
糸で体を固定し、「蛹」となった。僕の中で新しい僕が鼓動を打ち鳴らしてい
るのを感じた。蛹の中は暗闇で満たされていた。しかも身動き一つすらできな
かった。僕の目は機能を失い、君の様子まで見られなくなってしまった。僕は
蛹の中で.に様々なことを考えた。僕達が子孫を残す最大の理由とは果たして
何であろう? など色々だ、秋が終わり、長い冬がやって来た。風の音で分か
った、この長い冬さえ越せたら……、そう考えると僕には冬の長さなど全く苦
に感じなかった。

やがて雪が解ける音が聞こえ、春がやって来た。僕は試しに体を.し動かし
てみると、パリッ、という蛹の殻が聞こえた。とうとう?羽化?の瞬間がやっ
て来たんだ! そう確信すると、一気に新しい体に力を込めて、殻から背中を
出した。春の日差しが、背中に当たり、僕は恍惚とした気分になった。初めて
外界に出す乾燥していない羽は、予想以上に重たく、僕は思わず、蛹の殻から
一気に地上に落下しそうになった。しかしそれからは慎重に全身を外へ出すこ
とに全神経を注ぎ、数時間かけてゆっくりと蛹の殻から出ることに成功した。
僕を満たしていた体液や暗闇は一瞬にして日光により消滅し、じっと完全に羽
が乾くまで動こうとはしなかった。

数時間後、羽は完全に開くようになり、僕は茎から飛び立って、その上空を
.熟ながらもふらふらしながら飛んでいた。僕は思った、あぁ、これで僕は両
親や兄弟や仲間達の元へ帰ることができ、何も言われることなく、君と幸せな
余生を生きていけることができるのだ。僕の心の中は幸せな気持ちで一杯だっ
た。丁度その時、ふと君も羽化が終わったのではないかと思い、茎の方へ下降
していくと、僕は恐るべき光景を目にした、其処には、気色悪い羽根を持つ、
?蛾?が一匹、羽をぱたぱたとさせて鱗粉を撒き散らし、僕の姿を見つけると、


嬉しそうに近付いて来た。僕は今まで胸の中に抱いていた希望や夢などが一気
に崩壊し、君から一目散に逃げてしまった。

故郷のある方角へ物凄い速さで帰ってくると、僕はまた、心臓が引っ繰り返
りそうな位吃驚して、思わず気を失って地上に落下しそうになった。其処では、
鳥達が僕の両親や兄弟、他の仲間達を食い荒らしていて、僕と同じ色の羽が地
上に何十枚も落ちていた、鳥達は満足したのか、すぐにその場を離れて、何処
か遠い場所に向けて旅立っていった。僕は地上に降り、みんなの死骸を呆然と
見つめていると、譬えようのない虚無感に襲われた。











君を



ぐずついた空の下、君の世界の部屋の樹の根元に僕は永遠を見つけた。君は
亡くなった愛しき女性に瓜二つで君の笑顔の肖像画に思わず涙し、そして急い
でパソコンに向かい想いを綴っている次第である。君の世界に流れる旋律を聴
く為にイヤホンを繋ぎ、僕は改めて詩を書くことが出来る才能があって良かっ
たと思う。.だに涙は渇いた心を伝い、潤わせ、僕はようやく君の光と影にな
って光はこの旋律と絡み.って同じ速さで宇宙を走り続け、影は君の部屋の樹
に濃淡をつけ、君の悲しみや、寂しさを具現化する。しかし僕は傷付くのを恐
れて心を君から遠ざけ、吹雪の雪原を、君の理想郷へ向けて歩き続ける。

僕の疲れ切った心がこの唄と君の温もりで再生していく。君の温もり、それ
は世界でたった一つの僕の向日葵、沢山、沢山種をつけて、君の笑顔がこの世
界一面に咲き誇ればいいのに。僕は輝かしい.来を見つめ、その眩さに視力を
失ってもいいと一瞬思った。命を縮めてもいいから、君のこれまでの人生を回
想できたらいいな、と思った。僕と君は純粋な世界で手を繋ぎ、取り壊された
君の部屋の樹の根元に腰を下ろし、悪魔を呼び寄せ、この世界の秩序を保つよ
うに命を分け与えた。

君は小学校の図書.で永遠を見つけた。それは末の形をしていた。この詩を
書いている僕は焦燥に駆られていた。詩人として生きていけるのか、という、
君は亡くなった愛する女性にそっくりだった。でも現.では君にそのことを告
げる可能性、勇気は皆無に近かった。君のことは誰にも秘密であった。世界中
の誰にも。僕は瞼を瞑り暗闇の扉を開け、想像を想起させ、翼を広げて、死後
の世界へ旅立った。しかし、君が現.でまだ生きている為に瞼を開け、寂れた


教会の朝の日課の雪掻きを始めた。君のこれまでの人生の回想は働いている間
のみ、映写機のように回り続けた。

寂れた教会の心象を掻き消し、僕は、キーボードを打ち、君のこれからの絶
望を想像した。僕には人の.来を感じ取る能力などないけど、なんとなくそれ
に近いものを嗅ぎ取る「不安」があった。ぐずついた空の下の東京は、全てが
灰色に映り、水溜まりを舐める野良猫、水飛沫を立てる自動車、様々な思想を
持つ外国人、立体迷路のような地形などに僕の末当の心を休める永遠なんてな
かった。本幌のこと、その寂れた森の中の教会のことを思い出すとそれらの落
差に愕然とした。そうして君への想いはいつもここで断ち切られパソコンの充
電は無くなる。

僕は、人は、君の世界に流れる旋律に乗せた言葉のように強く生きていくこ
となどできない。それは君にも言えることで、君に想い人がいることを君の笑
顔から感じ取ることも容易だった。僕の想いは吹っ切れた。この心に残された
のは君から貰った「永遠」、だけだけれど、この位距離を置いておかないと、
「君」にいつまでも愛しき人を重ね.わせることになるし、理想の永遠なる世
界と、過酷な現.の.沼の間で苦しい思いをすることはもう嫌だったのだ。そ
れで思考や心が平常になるのもおかしなものだと一人表情が緩むのだけれど。

新しい永遠の出現は僕にとって大いなる進歩であろう。これから僕は人々で
賑わう表通りには決して姿を現さず、森の中で静かに詩作をし、厳かで質素な
生活ができればいいと思う。ただ、これだけは許して欲しい。君へ、君を時々
思い出し、詩作が「永遠」を見つける旅も兼ねていることを、愛する人と共に
眠りに就く前に、ふっと思い出してくれれば。











猫の墓地



飼っていた猫が死んだなら、「猫の墓地」と呼ばれる墓地へ連れて行き、埋
葬させてあげた方が死んだ猫達にとって、これ以上ない供養である。その、「猫