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MARUYA-MAGIC

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えながら僕に手を差し伸べ、その手を掴み僕は立ち上がろうとした。その瞬間、
僕はその手の綿のような感触からこの女の子が「人形」であることを悟った。
僕は立ち上がったまま暫く困惑していたが、女の子は無言のまま手を離さずに
さらににっこりとして、僕の手を引っ張って迷路のような路地裏をすいすいと
進んでいった。

得体の知れない奇抜な外観の店屋に着いたのはそれからすぐのことだった。
女の子は木製の扉を開け、僕も店屋に入っていくと、その中には僕達人間と等
身大の人形が所狭しと置かれてあった。そして女の子は僕の手を離し、奥の方
へ走っていったので、僕も狭苦しい通路を通りその後をついて行くと、カウン
ターが見えてきて其処には?道化師?の格好をした若い男が立っており、けば
けばしいメーキャップをしていた。女の子はその男の隣に立つと男の顔を見上
げ、男が女の子の頭を撫でると、女の子はまたにっこりして近くの棚に飛び乗
り、男が指を鳴らすと、女の子は動かなくなった。?男は魔法で女の子を動か
していたんだ?、僕はそう心の中で思った。

男と僕はすぐに打ち解け、仲良くなった。男の声は渋く、長身で、メーキャ
ップを取った素顔はとても端正な顔立ちだろうと容易に想像できた。あっとい
う間に楽しい時間は過ぎ、ピエロの顔の時計の針を見てみると、時刻は夜十時
を回っていた。僕は途端に慌てふためき、男に困惑した眼差しを向けると、男
は相変わらず笑顔で、僕の頭を撫でて、カウンターから出てくると、ピエロの
時計の針を回し、僕の方を向いてにっこりと微笑むと、指を鳴らした。すると
眩い光が僕を包み、思わず目を閉じ、それからすぐに瞼を開けると、なんと、
僕の住んでいる街の近郊行きのバス停の前で立っていた。辺りをきょろきょろ
見回しても先程の男の姿や店はなく、街の時計を見てみると、午後三時で、携
帯電話を見てみると電波はきちんと立っていて、充電は満タンだった。僕は今
まで「夢」を見ていたのではないかと疑ってみたが、ズボンのポケットに違和
を感じてまさぐって取り出してみると、「男」の人形のストラップが出てきた。
やっぱり夢じゃなかったんだ!! と自分でも分かるぐらい笑みが顔に浮か
んでいるのを感じて、バス停にやって来たバスへ乗り込み、家に帰った。

それからというもの僕は小学校が終わると毎日街へ行き、路地裏の入り口で
待っている女の子に導かれて、男の人形屋に遊びに行った。男は僕のことを楽
しみに待っているようで、店屋の人形達に次々と魔法をかけて人間と同じよう
に動かしてくれた、転校してきたばっかりで、小学校で友達のいない僕にとっ


て、人形達はかけがえのない友達であった。男は毎日毎日、新しい人形を店に
飾っては、僕に新しい友達を紹介してくれた。











13F



僕と妻は旅行でとある地方の三流ホテルに宿泊をすることにした。夕食のバ
イキングも三流、サービスも三流、最上階の温泉の質も三流で、全く何も取り
柄が無いようなホテルだった。此処を選んだのは勿論宿泊費が安いから、とい
うことだが、それ以外を除いて、末当にあのホテルは三流の刻印を永久に押さ
れても百人中百人が、何とも思わないだろう。話が.し逸れてしまったが、僕
が今夜君達に話したい話は、ここから始まる

そのホテルは閑散とした地方の山奥にあったのだが、ホテルを建設する時に、
その山を私有地にしていて、キリスト教を信仰している村人達が建設に反対し
たそうなんだ。しかし、強制的に開発が進められ、それを食い止めようと村人
達は作業員達を次々と襲撃してきたので、建設会社の社長は激怒して、村を焼
き払い、生き残った村人達は命だけは助けてくれ、と懇願したけれどその言葉
を黙殺し、ホテルを建てる埋め立て地に彼らを放り込んで生き埋めにしたそう
なんだ。記者の僕が言っているのだから末当だよ? 何だよ、その疑わしそう
に見つめる目は? …まぁ、いいさ、続きを始めるよ。

そのホテルの社長はね、「将来、このホテルを国際的に有名なホテルにした
い」との理由で、当時としては珍しい西洋風のエレベーターを導入したんだ。
そのエレベーターには「13F」が無かった。そしてそのホテルはその後難な
く竣工し、当時としては莫大な金を掛けて全国的に.伝し、その結果、全国か
ら観光実が押し寄せてきて多額の利益を得たんだ。しかし一方で、そのホテル
のエレベーターに夜中一人で乗ると神隠しに遭う、という噂がちらほら流れて
くるようになったんだ。だから僕はせっかくの連休を利用して、観光も楽しみ
ながら、そのホテルに泊まることにしたんだ。いや、嘘じゃないよ、末当だよ、
そしてその噂が真.なのかどうか突き止める為に、真夜中に一人エレベーター
に乗って、どんなことが起こるのか確かめようと思ってさ。

深夜0時が過ぎた、妻がダブルベッドで眠りに落ちると、僕は最上階の風呂
に入りに行き、真夜中のエレベーターに乗り込んで一番下の階に降りた。しか
し一向に変わった現象は起きない。部屋で飲むビールを自動販売機で.末買っ


た後、再び同じエレベーターに乗った。喉が渇き過ぎて部屋に帰るまで待てな
くなって一気に飲み干すと、一気に酔いが回り、火照った瞼を閉じて心地良さ
を感じていた。そしていつの間にか一時的に眠りに就き、僅かに働く思考で、
「ピンポーン」と階を知らせる音が鳴れば起きられるという、ぎりぎりの覚醒
と意識不明の境界線を彷徨っていた。そして「ピンポーン」と鳴り、気怠く瞼
を開けると僕は思わず二末目の飲みかけのビールを床に落として唖然として
しまった─其処はこのホテルにあるはずもない「13F」だったからだ─。何
度エレベーターのボタンを押しても扉は閉じず、微塵たりとも動かなかったの
で、僕は思わず夢でも見てるんじゃないかと思ったよ。しかしそこは紛れもな
く「13F」だった、その暗闇の奥に広がっているものは、伽藍とした何もな
い空間だけであった。だがよーく目を凝らしてみると、其処には、全身.だら
けの村人らしき人間達が立っていて僕が引き攣った声を上げると小汚い手を
伸ばして僕の方へ向かってきたんだ。僕は恐怖と絶望のあまり小便を漏らし、
壁にもたれ掛かって缶ビールを投げ付けたけど、彼らの体を通り抜けていくば
かりで、とうとう僕は村人等によって神隠しに遭ったんだ。

話を聴いてくれて有り難う、これで今日から君達も「13F」の住人の一人
さ。











デジャヴの夢 2009.1.28



過去に見た夢が夢の中で再び繰り返される同じ夢。三度目の同じデジャヴの
夢。僕は夢の中で胸が張り裂けそうな程息苦しい思いをしていた。早く目を覚
ましたかった。しかしその夢は僕を嘲笑うかのように延々とデジャヴの映像を
流し続けた。夢とは存在しない現.である。過去に多くの人間がそれらの謎の
解明について追究してきたが、結局誰にも仕組みは解き明かされなかった。け
ど僕なら…、「詩」という媒体を使って答えを導き出せるのではないか、と思