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冷たい夜

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 目を開いたら、暗い部屋だった。
 まだ夜中なのに目覚めてしまったようだ。トイレに行きたいわけでもなかったので、再び眠ろうとする。明日の仕事に備えて体力を回復するための睡眠時間は非常に重要なのだ。


(ん?……)
 冷たい風が窓を叩く音に紛れて声が聞こえたような気がした。
 耳をすましてみると、確かに聞こえる。
(赤ん坊の声?……いや……これは……猫の鳴き声……か……)
 猫の鳴き声は赤ん坊の声のように聞こえることがある。
 きっとそうだ。
 こんな夜中に子供が外にいるはずがない。


 窓の外から聞こえてくる猫の鳴き声。
 決して大きくはないのだが耳障りな音が眠りを妨げる。俺は布団を頭から被って、その雑音を遮断しようとした。

 それでも聞こえてくる。

 ずっと聞こえてくる。

(うるさい! うるさい!)
 俺は心の中で叫ぶ。
(黙れ! 黙れ!)
 俺は眠りたいだけなのに、それを邪魔する存在。
 そんなモノ、消えてなくなればいい。
 雪に埋もれて凍え死ねばいいんだ。

(死ね! 死ね! 死ね!)

 布団の中で丸くなりながら、俺は呪いの言葉を吐き続けた。



――― それから、どれくらいの時間が経ったのか。


 いつの間にか、猫の鳴き声は聞こえなくなっていた。


作品名:冷たい夜 作家名:大橋零人