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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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「歩けないようなら、輝クンが背負ってくれるわ」
「オレが?」
 椛が輝の背中を打った。
「男の子の当然だよ!」
 小さい子供にまでこう言われてしまっては仕方がない。輝は楓を背負おうとしたが、楓は大きく首を横に振った。
「……大丈夫、歩ける」
 楓はそう小さく呟くと、未空の手をぎゅっと握って再び歩き出した。
 そんな楓を見て輝はちっちゃな感動を覚えた。小さいのに強い子だ、きっと大きくなってもいい子に育つだろう。けど、なんで不気味なのには恐がらなくて、足をちょっと擦りむいたくらいで泣くんだ? そんな疑問が輝の頭に残ってしまった。
 暗い廊下は続き、静かな廊下には輝たちの足音だけが響き渡っている。はずだった。
 椛と楓がそれいち早く気がついた。
「「何か来るよ!」」
 声を揃えて叫んだ椛と楓は、同時に後ろを振り返った。
 二人につられて後ろを振り返った輝が見たものは、暗い廊下の奥にぼんやりと輝く光だった。それはだんだんと近づくにつれて形がはっきと見えてきて、青白い光を纏った人だということがわかった時には、未空がいち早く動いていた。
 未空はポケットから子瓶を取り出すとコルクの蓋を開けて、中身の液体を幽霊と思わしき者に振りかけた。
 すると、幽霊と思わしき者は闇に溶けるようにして消えてしまった。
 一瞬の幻のような光景だったが、輝は心にしっかりと焼き付けた。
「すんげぇ、星川さんってやっぱすっげえよ。何かいいもん見ちゃったなぁ〜」
 輝の目に映る未空の姿は、映画に出てくるお化け退治の専門家のよう写っていた。
 昔から輝はテレビのヒーローなどに憧れている節があり、実際に何かと戦う未空を見たのはこれが初めてだったので感動は一入だった。
「星川さんカッコいいっスよ!」
 ワザとらしいまでにはやし立てる輝に未空は照れたのか、少し笑みを浮かべた。
「輝クンにそう言ってもらえると、うれしいかな」
「「未空お姉ちゃんカッコいい!」」
 椛と楓も未空のことを褒め称えた。
 輝は未空の前に駆け寄ると、未空の持っていた子瓶をまじまじと眺めた。
「でも、それ何なの? 液体みたいのを振りかけてたけど?」
「この瓶の中に入っていたのは、なんちゃって聖水よ」
「なんちゃって聖水って何?」
 輝は聖水というのはテレビゲームで何となく知っているが、『なんちゃって』とはどういうことなのだろうか?