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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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「アタシは武にここに霊力を秘めた弓矢が奉納されていると聞いて連れて来てもらったんですけど?」
「あの弓矢がどうかしたかの?」
「ぜひ、貸していただけませんか?」
 神主である葉月老人は少し考え込んでしまった。考えると言うことは貸しくれる見込みがあるということなのか?
「駄目じゃな。あの弓矢を貸して欲しいということは、それなりの理由があるのじゃろう。しかし、あの矢はこの神社を守る神器じゃからな、この神社から外へ出すわけにはいかん」
「えぇ〜、そんなぁ」
 武はあきらめつかないようすで祖父の顔を覗き込むが、葉月老人は首を横に振るのみだった。
 綾乃はお茶を一気に飲み干し立ち上がると、武の腕を掴んで立たせた。
「仕方ないわよ、大事な神器ですもの……、帰りましょ」
「腕引っ張らないでよぉ、ボクまだお菓子もお茶も飲んでないのにぃ」
「もう帰るのかの?」
 綾乃はお辞儀をして、
「失礼しました」
 と言うとここに残ろうとする武を引っ張って玄関を出た。
「お茶とお菓子……」
「そんなのどうでもいいでしょ!」
「よくないよ、あのお茶高級玉露で一〇〇グラム七〇〇〇円もするんだよ。それにお菓子だって高級和菓子でおいしいんだから!」
 武は食へのこだわりを強く持っていて、祖父の家で出されるお茶とお菓子を毎回楽しみにしていたのに、今日は相当ショックだったのだ。
「そんなことよりも、弓矢ってどこに奉納されてるの?」
「えっ、弓矢? 弓矢は本殿に祭られてると思うけど?」
「じゃあ、取りに行きましょう」
「ええっ!? それってまさか……盗み出すってこと!?」
「ちょっと借りるだけよ」
 ちょっとも何もない。立派な窃盗だ。
「そんな、じっちゃんに言わないで借りるのは……」
「じゃあ、アタシが弓矢を勝手に借りて帰った後に、武が借りましたって伝えといて」
「何それ、意味ないよそれじゃあ……、でもぉ、仕方ないか。黙って借りていこう」
 武は綾乃の妙な威圧感に押されて仕方なく綾乃の話を呑んだ。
「じゃ、決まりね」
 二人は神社の本殿の中へこっそり侵入することにした。
 扉を開けて靴を手に持ち中に入ると、そっと扉を閉めた。
 本殿の中は静けさと荘厳な雰囲気で満ち溢れていた。ここで悪いことをしたら必ず神罰が下るに違いない。ここにいる二人はそんな中、悪いことをしようとしていた。