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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 駅は小さくホームと改札口以外の余計なものは無かった。
 駅の外は朝の清々しい空気で満ちていて、景色から判断できるだけでも都心からは離れたことがわかる。
 辺り一面広がる野原と田んぼと畑。そして、山が大きく見える。
 家と家との距離がだいぶ離れた位置にあり、遠くの方に比較的大きなスーパーっぽいお店があるが、コンビニはどこにあるのだろうか、ゲームセンターはどこにあるのだろうか、デパートはどこにあるのだろうか?
 朝のせいもあるかもしれないが、そこから中から鳥の鳴き声が聴こえる。都会でも聞けるスズメやカラスの鳴き声だけではなく、綾乃が名前を知らないような鳥の鳴き声も聴こえる。
 キジバトの鳴き声をひらがなで表記する時『ででっぽうぽう』と表記することがあるのだが、そのキジバトの鳴き声とフクロウの鳴き声を間違えるくらいが綾乃の鳥の知識だ。
「のどかな田舎ね」
 綾乃が口に出すまでも無く田舎だった。
「ここからちょっと歩いたところに神社があるんだよ」
「……ちょっとね」
 この風景を前にしての『ちょっと』とはどのくらいの距離を示す言葉なのか、綾乃は不安になった。
 畑の横の満ちを通り、武に道を案内されながら綾乃は武のやや後ろを隠れるようにして歩いていた。
 いつもなら綾乃は知らない土地でもどんどん先を歩いていってしまうタイプなのだが、綾乃にとって田舎は知らない土地ではなく、秘境だった。
 道すがらすれ違う人から挨拶をされてりしたので武は元気よく笑顔で挨拶を返すが、綾乃は少ししどろもどろで返した。ここの土地で会う日本人は、綾乃にとっては言葉の通じない宇宙人に等しかった。
 普段の綾乃は少し気が強くて強引なところがあるが、自分の知らない環境には弱いのだ。
 だいぶ歩いた頃、鳥居と長い階段の前まで到着した。
 何百段もありそうな階段を目の前にして綾乃はぐったりした表情を浮かべた。
「これ昇るの?」
「うん、この山の上に神社が建ってるんだよ」
「ふ〜ん」
 この『ふ〜ん』は納得ではなく、あきらめから出た言葉だ。
 階段は長くて急だった。普段運動をしない者にはひどく辛いに違いない。筋肉痛は確実だ。
 綾乃にはこの階段が罰ゲームのように思えた。学校で放送部に所属している文化部系の綾乃にはこの階段は登れそうにない。彼女は体育も嫌いで汗をかくことも嫌いだった。