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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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破魔の弓


 小春市某所にある今は廃墟と化してしまった立ち入り禁止の病院に琥珀と尊は潜伏していた。
 琥珀と尊はすでに人間の世界での生活に溶け込み、互いにマンションで独り暮らしをしているのだが、ここ数日はこの病院で寝泊りをしていた。それには理由がある。
 この病院が潰れた理由は人的要因だが、それを引き起こしたのはこの病院が建っている敷地に問題があった。この病院が建っている大地はこの地域のエネルギーを最も集めやすい場所で、そのエネルギーがあまりにも大きかっために、ここにいた人間たちが絶えられなくなったのだ。
 人間たちには手の余る巨大なエネルギーを琥珀と尊は操ろうとしていた。
「だが、片割れだけでは私たちの計画には不十分だ」
「それはわかっているが僕も君も負傷して動くことができない。どうするんだい?」
「大丈夫だ、もうすぐ使い魔たちが到着する。そやつらにもう一人の椛を連れてくるように命じる」
 尊は結界の中に閉じ込めている椛を見た。椛はここに連れて来られてから一言も口を聞いていなかった。
「あの時に邪魔さえ入っていなければ私の術で椛を仲間にできたのだがな」
「真堂と言う男のことだな。それに未空という女も図書委員で顔を会わせていたよ」
 今になると琥珀の口から図書委員という世俗的な言葉を聞くと、とてもミスマッチな感じに聴こえる。
「未空は私の友達だった」
「あの未空という女は危険な存在だ。そう、あの図書室で最初に顔を会わせた時も僕の顔をじっと眺めて何も言わずに去って行った。すでにあの時に僕が人間でないことに気づいていたのかもしれない」
 尊は心の中で思った。ならば私も、最初から人間でないとわかっていながら未空は友達として接してくれていたのか?
「星川未空……人間の中で最も理解できない人間かもしれないな」
 そう言うと尊は遠い目をして物思いに耽った。夜の暗闇が深くなり、今は彼女の時間だ。

 翌朝日が昇る前よりも早く起きた綾乃は学校には行かず駅に向かった。
「ごめ〜ん待った?」
 綾乃が手を振る先には藍澄武がいた。
「綾乃っていつも待ち合わせに遅れて来るよね」
「だって寝癖が直らなかったんだもん」
 毎回待ち合わせの時間に遅れて来るという綾乃の心理には、自分は相手よりも価値があり、相手は自分に従うのが当然だという傲慢な態度の現われだったりする。