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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 武はジェスチャーを交えて火のつもりになって迫真の演技をしているつもりなのだが、両手を挙げるその格好は傍から見たらバレーボールのガードのようにしか見えない。
「それでさぁ、消防車とか何台も来ちゃって……。それだけじゃないんだよ、ここからがこの話の重要なところ」
 一生懸命話をする武だが、食い入るように聞いているのは輝だけで、悠樹は頬杖をついて話を適当にしか聞いてなかった。この時の悠樹はすでに夕食のことを考えていた。
 話の先が気になる輝は武を急かした。
「重要なところってなんだよ?」
「実はさぁ、火事を目撃した多くの人が燃え上がる炎の中に白い狐を見たんだって!」
「狐?」
 輝は思わず聞き返してしまった。火事と狐、何の脈絡もない。
「そうだよ狐見たんだって、ミステリーだよね。きっと妖怪だよ妖怪。その狐が火事を起こしたんだよきっと」
 だんだん現実味のない話になっていく武の会話を聞いていた輝の口は、いつの間にかポカンと開かれてしまっていた。
 悠樹はもともと話を聞き流していたが、彼の特性から話を聞いていなくても相槌を入れるクセがある。
「その狐を武自身が見たわけじゃないんだろう?」
「そうだよ、ボクのお母さんが近所のおばさんに朝聞いたんだって」
「では、そのおばさんは狐を見たのか?」
「ううん、そのおばさんも人から聞いたらしいよ」
 少し考え込む悠樹。そして、彼の出した答えは、
「都市伝説と一緒だな。友達の友達のお兄さんが呪いのビデオを見たとか――そう言った遠い知り合いが話に出て来るのが都市伝説などの噂によくあるパターンだ。そう言った話は確証に欠けることが多いので安易に信用することはできない」
 端から超常現象などを信じていない悠樹は武の話なんて信じるわけもなく、武は少し不満顔だった。
 武はもともと超常現象の類、宇宙人とか妖怪とかムー大陸などなどの話にすぐに興味を持って信用し、輝や悠樹によく話をするのだが、悠樹にはことごとく否定され続けてきていた。だが、今回の武はいつもと違い悠樹対策をちゃんとして来ていたので、自身に満ち溢れていた。
「悠樹のことだから、証拠がないと信じないと思って今回はちゃんとこれを――」
 武は制服のポケットから一枚のポラロイド写真を取り出すと、机の上にバシンと叩き付けた。
 写真にすぐ食いついて来たのは輝だった。