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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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「星川さん、これをしっかり噛んでいてくださいね」
 未空は悠樹に言われたとおり布を口に挟み噛み締めた。
 矢は二本とも身体を貫通しており、抜くためにはまず矢先を折らなくてはいけない。
 悠樹はまず肩に刺さった矢先を折ることにした。矢に手をかけ、
「折りますよ」
「うう……うっ……」
 矢を折った瞬間、未空はビクッと震え身体を反らせた。悠樹は間入れず折った矢を引き抜いた。
「うぐっ……」
 再び未空の身体が震えた。激しい痛みが未空の身体を襲っているのだ。見てる悠樹たちも苦痛に顔を歪ませてしまう。
 口に加えていた布を落として未空はぐったりしてしまった。
 椛は矢が抜けて血の吹き出してきた傷に手をかざし、すぐに治療し始めた。傷はすぐに塞がったが、矢はもう一本残っている。
 未空は自ら落とした布を掴み、
「早く、次の矢を……」
 と言って再び布を咥えて噛み締めた。
 悠樹は言われたように矢に手をかけて力いっぱいへし折った。
「ううっ……」
 身体を震わせながら未空は折られた矢に手をかけ、自ら矢を引き抜いた。
「……う……くっ」
 抜いた矢を遠くに放り投げた未空は、ゆっくり息をして呼吸を整え始めた。
 椛が再び治療に取りかかり傷は塞がり、腕の傷も包帯を外して傷跡まで全く残らないまでに治療した。しかし、未空の衣服に染み込んだ血の量を見ればわかるが、生命の危機にあることは先ほどと変わりない。
 自分のエネルギーを送りつつける椛。彼女の疲労も大きなものだ。
「大丈夫です。私が力を送っていれば、徐々にですが回復しますから」
 心配そうな顔をして未空を見守っていた悠樹が何かに気づき顔を上げると、そこに立っていたのはなんと、人間の姿に戻っている琥珀と矢を身体に刺したままの痛々しい姿の尊だった。
 椛が後ろを振り向いた途端、琥珀は炎を手に溜めた。
「動くな、動くとそこの人間どもを火あぶりにするぞ」
「迂闊でした。未空さんに気を取られて、あなた方のことに気づかなかったなんて……」 自分を悔いて椛は唇を噛み締めた。
 現状は最悪だった。椛は少しくらいの炎では死ぬことはないが、人間では駄目だ。
 尊は指で印を組んだ。
「仲間になる気がないのならば、術を架けて仲間に引き入れるしかないな」