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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 連れ帰った琥珀は重症で、生死を彷徨うそんな彼を椛は寝ずに十日もの間看病を続け、自らの力を琥珀の身体に注ぎ込んだ。
 やがて傷が癒えた琥珀は力を回復した。しかし、以前の琥珀とは一つ違う点があった。それは身体の中に椛のエネルギーを貰い受けることにより、神格としての善の心が注ぎ込まれたこということだ。
 命を救われたことに琥珀は感謝し、今までの行いを少しずつだが悔いるようになった。
 琥珀は椛と共に暮らすことになり、椛が人間たちを救うのを見るうちに、全ての人間が残虐非道な者たちでないことを知った。
 人々は椛を頼りとして、敬い感謝する。琥珀は自分もそういう存在になりたいと思った。そして、琥珀は椛と共に神となり人間に罪滅ぼしをすることにしたのだった。
 月日は流れ数百年の時経ち、椛を信仰するものは次第に減り、それによって神社の規模は縮小されていった。
 人々に必要とされなくなった椛の力は年々衰えて、ついには幼児化してしまった。そして、琥珀もまた存在の危機にあった。
 ある日の晩、若者のグループが神社にやって来た。
 若者たちは持ってきた石油を楓の御神木にかけて火を放った。なぜ、そんなことをしたか、それは実にくだらない理由だった。
 酒に酔った若者たちの度胸試しと、それに加えてグループの中の一人が、だいぶ前に小春神社で受験祈願をしたのに合格できなかったことへの腹いせ、――それでだけの理由だった。いや、理由などなかったのかもしれなし、どうでもよかったのかもしれない。ただ何となく魔が差しただけだったのかもしれない。
 長い年月ここに立っていた楓の御神木は短い時間で燃え上がった。
 異変に気づいた椛と琥珀は紅葉したように燃え上がる楓の木に駆け寄った。逃げる若者たちの後ろ姿は見られたが、すぐに闇の中へと消えていってしまった。
 椛は燃え上がる楓をただ呆然と見ることしかできなかった。その傍らでは琥珀は怒りに打ち震えていた。
「許さぬぞ……人間どもが……」
 この時、琥珀の中の何かが呼び覚まされた。まさに炎が琥珀の心に火を点けたのだ。
「炎で焼かれる苦しみを味わせてくれる……」
 琥珀は炎で焼かれる苦しみを誰よりも知り、炎の恐ろしさを誰よりも知っていた。
 椛によって注がれた清い力に押されていた琥珀が本来持つ憎しみの力が爆発した。