トゥプラス
炎に包まれた狐が暴れ回るのを見て人間たちは逃げ惑った。
熱さに悶える琥珀は人にぶつかり火を点けていった。火を点けられた人間も琥珀のように燃え上がり悶え苦しむ。
やがて、弓を構えた人間たちに琥珀は囲まれ、合図と共に幾本もの矢を身体に刺された。それでも逃げようとする琥珀であったが、ついに地面に倒れ身体が動かなくなってしまった。
人間たちが動かなくなった狐に近づいたその時だった。燃え上がる狐に触れもしないのに近づいた全員の身体が真っ赤に燃え上がったのだ。
全身を火に焼かれ地面に転がり苦しむ人間に囲まれて、炎を身に纏った?妖狐?琥珀が立ち上がった。
全ての怨念が琥珀を本当の妖怪へと変えたのだ。
この後、琥珀は里を焼き払い、大勢の人間を焼き殺した。どうにか命の助かった里のものは炎を纏う狐をこう呼んだ?琥珀?と――。
炎に包まれ、その奥に見える狐を琥珀に見立ててその名がついたのだ。
妖狐になった琥珀は多くの里を襲い、大勢の人間を焼き殺して復讐をしていった。そのことにより人間は琥珀に強い恐怖心を覚え、琥珀の力は人間に想われることにより、増していくことになった。
琥珀に敵う人間など現れなかった。幾人もの武士が琥珀の命狙ったが皆焼き殺してやった。
各地を廻るうちに力を蓄えていった琥珀はいろいろな妖術も覚え、人間に化ける術も会得した。このことにより琥珀は、人間に化けて人間たちをたぶらかすことも覚えた。
ある時、琥珀は都に美男の姿で訪れた。そこで多くの女性をたぶらかし、屋敷に火を点けるという毎日を送っていた。だが、少々長居をし過ぎたようだ。
ある日のこと、いつものように美男の姿を取った琥珀は、言葉巧みに女性の家に泊めてもらい、その日の晩に屋敷に火を点けようとしていた。
夜になり屋敷に火を点けようとした時、琥珀は大勢の人間に囲まれてしまった。全て罠だったのだ。
琥珀を捕まえようとしていた都は女性を使って琥珀を誘い出し、召し取ってやろうと考えていたのだ。琥珀はその罠にまんまとはまってしまったのだ。
大勢の人間に囲まれた琥珀は慌てることもなく、銀色の毛を持つ妖狐の姿に変身した。 鎧を着た武士が襲いかかってくるが、琥珀は全身に炎を纏い、その炎を武士目掛けて飛ばした。
鎧を着ていても炎に包まれては意味がない。
作品名:トゥプラス 作家名:秋月あきら(秋月瑛)