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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 食料がなくなるという被害を受けた里の人々はあの手この手で策を講じたが、盗みに慣れてきた琥珀はなんなく罠などを掻い潜り盗みを働いた。
 長い間このようなことが続くうちに里の者は恐怖心を抱くようになった。それは里の者は誰も盗みを働いている獣、つまり琥珀の姿を見た者が誰もいなかったからだ。そのため人々はもしかしたら食料を盗んでいるのは獣ではなく妖怪の仕業ではないかと考えるようになっていった。
 人々に妖怪と思われるようになった琥珀はそんなことなど知る由もなく盗みを続けていった。
 里から食料が減ると琥珀は別の里で盗みを働くようになり、盗みの範囲は徐々に広がっていった。そのため食料を盗み家畜を食い荒らす妖怪の噂も広がることになった。
 ある日のこと、琥珀はいつものように盗みをしようとしていた。
 深夜になり琥珀は民家の中に入っていった。盗みを重ねるうちに琥珀の犯行は大胆になっていったのだ。
 物色をしていた琥珀の耳がピンと立った。寝ていたはずの住民が目を覚ましたのだ。しかもそれは生まれて間もない赤子だった。
 琥珀は焦った。きっとこの赤子は大きな声で泣くに違いない。そう思った。
 泣かれて親に起きられるとまずいと思った琥珀は赤子の首に飛びかかった。
 殺してしまえ。浅はかな考えではあるがそうすれば泣かれずに済むと思ったのだ。
 首を噛み切り殺そうとしたが、すぐには死なず赤子は大きな声で泣いた。両親が飛び起きた。
 琥珀はどうしていいかわからなかった。赤子はどうにか殺すことができたが、人間に初めて見つかってしまった。
 血だらけになった自分の子供と、口の周りを真っ赤に染めた狐を見た人間は叫んだ。
 琥珀は逃げた。一心不乱に逃げた。しかし、後ろからは赤子の両親と騒ぎを聞きつけた者たちが執拗に追いかけてくる。
 暗闇の中を琥珀は山の中へ逃げ込んだ。途中で多くの者が琥珀を追いかけるのを止めた。暗闇の中を追うのは危険だと判断したためだろう。だが、赤子の両親はどこまでも追って来る。
 山の中を琥珀が逃げている途中、後ろの方から人間の叫び声が聴こえてきた。赤子の父親が足を滑らせ崖から落ちて死んだのだ。
 その後からは誰も琥珀を追って来なかった。