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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 椛は泣き崩れてしまった。楓の木は自分を生かすために力を全て自分に注ぎ込んでくれたのだ。
 椛は楓の木に力を与え、その後、琥珀を力ずくでも説得をして消えるつもりだった。それなのに自分は消えてはいけないようだ。
 ――椛は全ての力を取り戻した。これならば琥珀とも同等以上に渡り合える自信がある。
「……ここで待つわ」
 きっとここで待っていれば琥珀が現れる。そんな気がした。

 輝の家を出てすぐに琥珀は椛を追おうとしたが見つからなかった。
 浅手ではあったがナイフで刺された傷を癒すのにだいぶ力を使ってしまった。琥珀にとってそれは誤算だった。まさか、あの場所で未空のような特別な人間に出くわすとは思いもよらなかったのだ。
 傷は完全に癒え、出血も止まったが、それに使った力は重症を負った時と同じくらいだ。あのナイフには未空によって特別な術が架けてあったのだ。
 琥珀は椛のことを町中探すが見つからない。
 特別な力を持った者同士は気配で相手の場所を特定することができるが、範囲が広過ぎるとそれもできない。手がかりがない以上は闇雲に探すしかなかった。
 椛はいったいどこに行ってしまったのか? 計画は進み椛をなんとしても探さなくてはいけないというのに……。
 琥珀たちの計画にはどうしても椛の力が必要だった。
 小春市がまだ小春市と呼ばれていなかった遥か昔、この地域で最も力を持った神は椛だった。この地域を治めていた神でなくては最後の術は架けられないのだ。
 しかし、琥珀が椛を自分たちの仲間に引き入れたい理由はそれだけではなかった……。
 琥珀はあることに気づいた。
「そうだ、あそこならば椛がいるかもしれない」
 二人が長い時を共に過ごしたあの場所。小春神社に椛はいるのではないか。そう思い琥珀は運命に引き寄せられ小春神社に向かった。
 運命は嘘をつかなかった。琥珀は小春神社の前に来て、椛がこの中にいることを確信した。
 小春神社には人の目や感覚ではわからないが結界が張られている。しかし、それは琥珀を阻むものではなかった。関係ない人間に危害を加えないように椛が人間を入れないように張ったものだ。
 琥珀は結果に触れて腕を突き刺した。その感覚は琥珀にとってはゼリーに触れたような感覚だが、人間が触れると鋼鉄の壁のようである。
 琥珀が結界を通り抜け境内に入ると、やはりそこには椛が立っていた。