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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 椛の力は神格として人々に信仰されていた想いのエネルギーが根本だ。しかし、今の椛は神としての信仰を失っている。今ここにいるのは、ただの少女でしかなかった。
 一度消滅しかけた椛だったが、輝や悠樹たちが自分の存在を強く感じてくれたことにより、どうにか消えずに済んだ。だが、彼らは神としての椛を信じていたのではなく、少女椛という存在を信じてくれたに過ぎない、それでは元の力は取り戻せなかった。
 ただひたすらに何処に向かうでもなく逃げ続ける椛。自分はいったいどこに逃げようとしているのか? なぜ自分は逃げなくてはいけないのか? 私は琥珀を探していたのではないのか?
 椛の頭の中でいろいろな考えが浮かんでは解決されないまま蓄積され、頭は痛いほどに混乱していた。
 椛は琥珀を探していた。御神木であった楓が炎に包まれた晩――琥珀は怒りに燃えて火をつけた人間たちを追って出ていった。
 出ていく琥珀を椛は止めようとしたが、逆上している琥珀は昔のように悪に心を支配され不本意ではあったが椛に傷を負わせて出ていってしまった。
 椛は傷を治すことはできたが、最後の砦であった御神木も焼けてしまい存在の危機に陥った。
 椛は琥珀の帰りを待った。しかし、琥珀が戻ってくることはなく、椛は琥珀を探すために外の世界へ出たのだ。
「琥珀に会わなくては……」
 琥珀をどうにかして説得する。それには力ずくでもかまわない。しかし、今大きな力を無理して使えば自分の存在が消えてしまうかもしれない。
 椛は哀しさを感じた。琥珀には消えるのも運命なのだと言ったが、今は自分が消えてしまうのが哀しかった。
 輝や悠樹たちとの出逢い。それが椛には心残りだった。今消えてしまうのは嫌だと思った。
 遥か昔は人間と椛は近い存在だった。人々は椛を信仰して、誰もがその存在を信じ、椛もまた人々の前に姿を現すことがあった。しかし、現代では椛のような存在が人の前に姿を現すことが叶わぬ時代となってしまった。
 椛はとても哀しかった。久しぶりに人々と接し会えたというのに、何故消えなくてはいけないのか?
 昔はあんなにも多くの人々に慕われ敬われていたというのに……。
 人々の想いを聞き届け、川の氾濫を食い止めたこともあった。しかし、今は川は高い壁に囲まれ大きな氾濫を起こすことはなくなった。