トゥプラス
忍び寄る影
朝が来て、月曜日になり、いつも通り学校が始まった。
授業はいつもとなんら変わりなく進み、時間が過ぎていく。しかし、輝と悠樹にはその時間がとても長いものに感じた。
二人がそう感じるもの無理はない。椛を独り家に残して来てしまったのだから……。
当初は二人とも家に残ろうとして、これから日ごとに交代で一人が家に残ることにしようとしたが、この生活がいつまで続くかわからないので、椛に独りで留守番をしてもらわないと今後困るだろうという判断をして仕方なく二人で家を出て来た。
今まで仮面の被って学校生活を送って来た悠樹だったが、この日ばかりは気が気ではない。人に声をかけられても気づくのに遅れるし、問題を当てられても間違いを連発してしまった。そんな悠樹を見て、悠樹ファンはレアなものが見れたと喜ぶのだが――。
輝は輝で、いつもは騒ぎまくっているクセして、今日に限っては無口で物思いに耽る恋の悩みを持った青年みたいな顔をして、大勢の友達から心配され、春に大雪が降るとまで言われた。
ようやく昼休みになり、輝はいつも通り悠樹の近くの席まで行った。しかし、二人とも重々しい表情で無言だった。
すぐさま武が心配そうな顔をしてやってきた。
「どうしたのさ二人とも? 朝も声かけたのに反応してくれなかったしさぁ」
だいぶ遅れてから悠樹が言葉を返した。
「…………いや、すまん」
「遅いよ反応。二人揃って変だよ、変!」
いつもならここで何らかの反応が返って来るのだが今日はない。
武は顔を赤らめ膨らませた。何かあるなら自分に話して欲しいに二人は心ここにあらずと言った感じで、武はなんだか仲間外れにされた気分だった。
輝が突然席を立った。
「オレ、早退するわ」
「えっ?」
武が驚くのに間入れず悠樹も、
「輝が早退するなら俺も早退する」
「ええっ!?」
武は驚くしかなかった。なんで二人が早退しなければならいないのか検討もつかない。
「オレが早退するから悠樹は残れ
「俺だって椛のことをほって置けると思うか?」
この時武はピンと来た。
「椛って、あの椛ちゃん? あの子がどうしたのさ?」
「あの娘がどうかしたのか?」
会話の中に女性の声が入って来た。
三人が振り向いた先にいたのは月夜霊尊だった。彼女は何時の間にか三人の近くに立っていた。
作品名:トゥプラス 作家名:秋月あきら(秋月瑛)