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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 輝はひどく後悔をしていた。悠樹と喧嘩していたのは確かだったが、どうしてもっと嘘を上手につけなかったのか。もっとうまい嘘がつけていれば、椛は家を飛び出したりなんかしなかった。――そうじゃない、何で自分は悠樹と喧嘩なんてしてしまったのか……。
 突然あることが輝の脳裏に浮かんだ。
「そうだ、あの神社かもしれない」
 小春神社――そこにいるかもしれないと思った。根拠はないが、あそこには何かがあった。
 すぐさま自転車の方向を変えて小春神社へと急ぐ。
 そして、小春神社の前まで来た時、前方の道から悠樹が自転車に乗って現れた。
「輝もここだと思ったのか?」
「ああ、悠樹もか?」
「そうだ。二人が偶然に逢うなんて奇跡だな」
「奇跡なら椛もここにいるハズだよな」
「たぶんな」
 二人は境内の中に入った。そして、焼けた木の下で泣く少女を見つけた。
「椛、探したぞ」
 悠樹がやさしく声をかけると、椛はゆっくりと顔を上げた。その瞳は真っ赤で、涙が止め処なく零れている。
「うぐっ……ううっ……うっ……」
 嗚咽で全く声が出ない。そして、涙は地面に水溜りを作れそうなくらい流れ、止まることがない。
 二人の男は同時に手を差し伸べて、同時に言った。
「「帰ろう」」
 椛は涙を懸命に止め、肩を震わせながら両手で二人の手を取った。
 そのまま椛は二人の男に抱きしめられた――。
「椛のことでは俺たち、もう喧嘩しないから……」
「出ていかれると悠樹とケンカするよか心が痛むからよ」
 椛の身体は震えていた。
「うっ……う……でも……も、椛がいると……迷惑でしょ?」
「大丈夫だよ、いつまでもいていいから……」
 悠樹はそう言った。彼の中で何かが弾け飛んで新たなものが生まれたのだ。
「さ〜てと、帰るか」
 気を取り直した輝の声を合図に三人は家への岐路に着いた――。