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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 コーヒーを喉に流し込んだ悠樹は、カップを置くと綾乃に背中越しに手を振りながら自分の部屋に行こうとした。
「じゃあ、俺着替えてくるから洗い物よろしく」
「何でアタシが!?」
「時間の節約」
 悠樹は洗い物を押し付けて行ってしまった。ドアを叩かれたり蹴られたりして、悠樹にとって大事な朝食の時間を妨害されたことを少しだけ根に持っていた。
 仕方なく綾乃はお皿やコップをトレイに乗せてキッチンに向かった。その際、椛も綾乃の後ろにちょこちょこしながらついていった。
 キッチンに着いた綾乃は食器を流し場に置いてため息をついた。
「ふぅ、水仕事は肌が荒れるから嫌なのよね……?」
 綾乃がふと横を見るとそこには椛が大きな瞳で自分のことを見ているではないか。
「手伝ってくれるの?」
「うん!」
「ホントに!? 椛ちゃん、ちょ〜いい娘でちょ〜カワイイ〜!」
 ぎゅぅ〜っと椛を抱きしめた綾乃は、急いで椅子を持って来て、その上に椛を乗せた。
「椛ちゃんはアタシが洗ったお皿を拭いてね」
「うん任せて!」
 かわいい椛の支援もあって綾乃は意気揚揚とお皿洗いに励み、どんどん洗ったお皿を椛に渡していく。
 二人の息はぴったりで、どんどんお皿洗いのスピードは加速していく。だが、少し加速し過ぎた。
 どんどん渡されるお皿を拭こうと慌ててしまった椛は、ついうっかり手からお皿を滑らせてしまったのだ。
 床に落ちたお皿は四方に弾けて飛んで割れた。
「……ごめんなさい」
 椛の瞳はすでに涙が零れ落ちそうになっている。そんな椛に綾乃は笑顔を向ける。
「だいじょぶ、だいじょぶ、どうせ輝んちのだから」
 笑顔のまま綾乃は割れたお皿の破片に手を伸ばした。が、その時!
「痛っ!」
 指先から赤い血が滲み出て来た。綾乃は破片に触れた時に指を切ってしまったのだ。
 涙を流しながら椛は赤い血を見た。その時だった、涙が急に止まり椛の表情が恐怖に染まっていったのは――。椛は赤い血に燃え上がる炎を見た。
「きゃーっ!」
 急に叫び声を上げた椛。それに気づいて輝と悠樹が駆けつけて来た。
「どうした! なんだ、泥簿か、強盗か、痴漢かっ!?」
 一番取り乱しているのは輝だった。
「おまえが慌ててどうするんだ。――どうしたんだ? 叫び声をあげたのは椛ちゃんだろう?」