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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 尊は先ほどから身動き一つしないで黒板とまだ向き合っている。根気が強いのかもしれないが、黒板に向かっている顔は呆れているかもしれない。
 窓側の一番前に座っている小柄で幼い顔つきの男子生徒が勢いよく手を上げた。これには立花先生も目の前だったので紅茶を飲む手を止めて、何となく熱い眼差しで次の話の展開を見守ってみた。
 男子生徒が手を上げたことによって図書委員の枠が埋まり、委員は全て決まり、尊も黒板との対峙から開放されるに違いない。だが、悠樹はあることに気づいていた。
「何だよ武? おまえはもう美化委員に決まっているだろう?」
 手を上げたのは藍澄武(あととたける)と言って、悠樹の親友のひとりだったりする。そのため他の人と対応が違う。
「あのさぁ〜悠樹、ボク思うんだけど今日来てない?奴?に図書委員やらせればいいんじゃないかなぁ?」
 その言葉を受けて悠樹はクラスの席を見回した。空席になっていたのはひとつだけ。悠樹の親友である遅刻魔、真堂輝(しんどうあきら)の席だけだった。
 悠樹はすごく納得したように大きく頷き、
「月夜霊さん、真堂輝の名前を書いてください。クラスの意思です」
 と言ってクラスの無言の承認を得た。来てない奴が悪いのだ。
 黒板と対峙していた尊がやっと解放され、生徒の方を振り向いた、その時だった。教室の前のドアが勢いよく開けられ、ひとりの男が駆け込んで来たのは!!
「遅刻したーっ!!」
 と大声を上げて教室に飛び込んで来たのは、今日このクラスで唯一の欠席者、真堂輝だった。
 もうすでに紅茶を飲み始めリラックスモードに入っていた立花先生は、ティーカップを持ちながらその手で空いている席を指して教師らしい一言を発した。
「早く席に着きなさい」
 彼女が教師らしい発言をするなんてめずらしい。きっと気まぐれだ。雨が降る。
 輝が席に着くと、すぐ後ろの席に座っている輝と腐れ縁で幼馴染の涼宮綾乃(すずみやあやの)が声をかけてきた。
「あんた黒板ちゃんと見た方がいいわよ。特に図書委員らへん」
「はぁ? 黒板?」
 首を傾げながらも輝は綾乃がシャーペンの頭で指し示す場所を見た。――よく見た。そしてもう一度目を擦ってから、よ〜く見た。
「はぁーっ!? 何でオレが図書委員なの? オレ本なんて読まねぇーよ?」