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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 顔を赤らめてしまった悠樹を見て綾乃はしてやったりとニヤリと笑みを浮かべた。悠樹をからかうのが楽しくてしょうがないのだ。
 特にもうすることもなく満足した綾乃は自宅に帰ることにした。
「じゃあアタシ帰るから、椛ちゃんのこと頼んだわよ」
 玄関まで三人は綾乃のことを見送った。
 玄関を出る直前綾乃が、
「明日はアタシの気分でここに迎えに来るからよろしく」
 輝と悠樹に何も言わせずガチャっと玄関のドアが閉められた。世界は綾乃中心に回っていた。

 夜は更けて、家の中は寝静まっていた。
 輝と悠樹は各々の部屋で眠り、椛はどこで眠るのかと話し合った結果、今は使われていない輝の両親の寝室で寝ることになった。
 椛はダブルベッドに入りながら天井をじーっと見つめていた。
 ベッドに入ってからもうだいぶ時間が経ったはずだが、まだ眠れない。それどころか目が冴えてしまっている。
 自分が何者かわからない不安。いろいろなことが頭を駆け巡る。
 椛という名前とお兄ちゃんを探していたことは覚えていた。それと、未空に人間じゃないと言われたこと――確かに自分でも自分が人間じゃないことはなんとなくわかる。けれど、人間じゃない自分は何者なのか、それが思い出せずにいた。
 暗く静かな部屋で椛は居ても立っても居られなくなりベッドから飛び起きた。
 枕をしっかりと抱きしめて、部屋の外へ静かに物音を立てずにゆっくりと出た。
 廊下は暗く、恐ろしいほど静かだった。
 椛は静かに廊下を歩き、とあるドアの前で立ち止まり、ドアノブに手をかけてゆっくりと回した。
 ドアが開き椛は中へそっと入っていった。
 部屋の中はこの家の中で一番掃除や片づけが行き届き、もともとは輝の妹の部屋だった場所。今はもう完全に悠樹の私物が置かれて彼の部屋に模様替えされていた。
 静かに近づいて来た人の気配に悠樹は気づき目を覚ました。
「椛ちゃん……眠れないの?」
「うん」
 不安そうな顔をして椛はうなずいた。
 しばらく考えた悠樹であったが、掛け布団を持ち上げて椛を招き入れた。
「おいで、いっしょに寝よう」
 椛は言われるままに布団の中に入っていった。
 布団の中は悠樹の体温で暖められとても心地よかった。椛の不安は徐々に溶かされていく。
「ねえ、お兄ちゃん」