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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 未空の視線の先には、銀色の狐を抱きかかえた女性が立っていた。しかし、すぐに天井が崩落してその狐と女性の姿は見えなくなってしまい、女性が誰だったのかまで判別できなかった。
 誰も何も言わず、前を振り向き走り出した。
 病院の玄関を通り抜け外に出て、何十メートルも走ったところで、やっと足を止めて後ろを振り返る。
 大病院の廃墟は大きな音と共に脆くも崩れ去った。あのようすでは中に誰かがいたとしたら、決して助からないだろう。そんなひどい有様だった。

 廃墟の病院での事件から数日が経った日曜日の昼下がり、輝の家にあの事件に関わった全員が集まって来ていた。
 ダイニングで寛ぎながら、みんなで悠樹に焼いたクッキーを食べていた。
「「悠樹のクッキーおいしかったよ!」」
 声を揃えてそう言った椛&楓は手を繋ぎ、突然?一人?に戻った。
「悠樹はお菓子作りも上手なのね」
 美しい椛は笑顔までも美しかった。あの事件以来、?椛?は一人に戻ったり、椛&楓に分かれることが自由にできるようになり、食事などの間は必ず椛&楓に分かれていた。
 クッキーを思う存分食べた綾乃は紅茶を飲んで一息ついた。彼女はあの一件で髪の毛が少し焦げてしまったのでショートカットでボーイッシュなイメージに変身していた。
「ふぅ……あれからもうすぐ一週間も経つのよね。未だにあの時のことが夢みたいに思えるけど、椛ちゃんは確かにここにいるのよねぇ」
 綾乃の話を聞いていた武が急に顔を膨らませた。
「ここにいるみんなは大冒険したのに、何でボクだけ神社の掃除なのさぁ。輝と悠樹がもっと早くボクに話してくれてたらよかったのに、ボクってそんなに信用されてないの?」「おまえなぁ〜、オレたちがどんな死ぬ思いしたかさんざん聞かせただろ」
 輝は呆れ切った口調で言うが、武はそんなことなど聞き流していた。
 一人黙々と紅茶を飲んでいた未空がティーカップをテーブルの上に置いた。
「それで、椛ちゃんはいつまでこの家にいるのかしら?」
 この言葉には妙な殺気というか、嫉妬が含まれていた。
 綾乃も未空に続いて同じようなことを言った。
「こんな絶世の?美女?が、いつまで男所帯の家にいるつもりなの?」
 やはりこの言葉にも妙な殺気というか、嫉妬が含まれているように思える。
 未空は輝を、綾乃は悠樹のことを同時に一瞬睨みつけた。――ように思えた。