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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 普段ならば、傷口は数秒も経てば塞がるはずなのだが、この傷からは今も血が流れ出ている。
「私は少し人間の世界に溶け込みすぎたようだ……」
 尊はそう言ってゆっくりと目を閉じた。

 広いロビーで琥珀は狐の姿なり、椛と戦っていた。輝もこの場にいるが、普通の人間には手出しができない状況なので、コンクリートの壁に隠れて椛を応援することしかできなかった。
 琥珀の放つ炎が乱れ飛びながら椛に襲い掛かる。椛はそれを掻い潜るように避け、的を外れた炎は地面の表面のビニル樹脂を溶かし、下のコンクリートまでも焦がす。
 椛の放つ矢も琥珀の素早い身のこなしで避けられ、両者一歩も譲らぬ状況だ。
 咆哮を上げるなり、琥珀は巨大な狐火を口から吐き出し飛ばした。椛は小回りの利く身体で身を翻しながら避けると、琥珀の横に回った。
 琥珀は首を横に振りながら再び巨大な狐火を吐き出し飛ばしたが、椛はすぐに琥珀の後ろに回って矢を放った。
 振り返ることもできず、背後から矢を受けた琥珀の身体には大きな穴が空いた。
 一瞬表情を崩した椛であったが、すぐにその表情は曇っていった。
 琥珀が身に纏う炎が穴の空いた身体に吸い込まれるようにして傷口を塞いだのだ。炎を纏う琥珀は傷ついてもすぐに完治してしまう。
 燃え盛る琥珀は本気であった。椛が自分たちの仲間になることを強く望んでいたが、それが叶わぬと悟ったからだ。
「椛が敵である以上、それは脅威でしかない。計画なんてもうでもいい、君を愛した僕の手で君を必ず滅ぼし、僕も滅びよう……」
 琥珀の炎は激しさを増し、業火と化したその光は陽光のように辺りの闇をまばゆく照らした。
 意識せずとも琥珀の炎は辺り一面に飛び散り、壁や地面を焦がす。
 再び炎を吐き出す琥珀。椛はその圧倒した姿を見て勝てないことを悟り、避けることさえを忘れた。
 巨大な炎の塊が椛を喰らう瞬間、椛は輝によって押し飛ばされた。
「熱ーっ!」
 椛を助けた輝の右腕は服が真っ黒に焦げて、肌は焼け爛れていた。
「マジ、熱かった。てゆーか重症か!」
「大丈夫だよ、皮膚の表面が少し焼けてるだけだから」
 椛はすぐに輝の治療をしたいが、琥珀がそれを許さない。
「二人とも焼き殺してやる!」
 大きな口を空けた琥珀の口の中に椛は矢を放った。それにより琥珀は一瞬怯み、その隙に輝と椛は琥珀との間合いを取った。