小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

トゥプラス

INDEX|107ページ/115ページ|

次のページ前のページ
 

 未空は綾乃が走っていった方向とは別の方向へ歩き出した。しかし、その足は三歩ほど歩いたところで止まった。
「あ、そうだ……懐中電灯あそこに置いてきちゃった。輝クンのウチのだったのに、あとで弁償しよう」
 未空は再び歩き出した。

 身体を拘束していた紐を無理やり解き放ち、尊は長い廊下を逃げていた。
 尊は大きな誤算をした。まさか、椛があれほどまでの脅威になろうとは思ってもみなかったのだ。
 椛の力は確実に強くなっている。それは周りにいる人々の椛への想いが強くなったからだった。
 琥珀と尊が別れることによって相手の力が分散できた。現に後ろからは悠樹と楓が追いかけて来ている。二人の椛がいなければ勝算は十二分にある。
 後ろの二人を迎え撃つために尊は全力で戦える広い場所を探していた。しかし、廊下の途中である人物に出くわしてしまった。
「未空!?」
「尊のことは、あたしが止めなくてはいけないと思うの」
 未空は自分を悔いていた。尊が人間でないとわかっていながら、事件が大きくなるまで何もできなかった自分に……。
 すぐに尊の後ろから悠樹と楓も駆けつけて来た。
「星川さん!」
「未空お姉ちゃんだ!」
 尊は自らのエネルギーを使って弓を具現化したが、誰かに向けて構えることはしなかった。楓を倒すのが先決ではあるが、この狭い廊下では楓に弓矢を構えた瞬間に、後ろにいる未空に何かされるかもしれない。
 楓も弓矢を具現化して、こちらは尊に矢先を向けた。
 誰も動かない緊迫した空気が流れる。
 未空が一歩尊に近づいた。
「あたしはできれば尊に前のように人間の生活に戻って欲しい。そして、またあたしの友達になってほしい……」
「私はおまえたちを利用していただけだ。人間など道具に過ぎない!」
「俺にはそうは見えなかった。一緒にクラス委員をやったり、料理を作ったこともあったし、尊さんは本当に悪い人には見えなくて……」
「人間とは愚かな動物だ。私の演技に心を動かされるなど……、おまえたちがや殺れなくても、私は容赦なくおまえたちを殺す。そして、自分の存在をこの世界に強く刻み込む!」
 尊は弓矢を構えて楓に矢を放った。
 少し遅れて楓も矢を放ったが、尊の放った矢の方が早く楓の身体を貫いた。しかし、尊の狙った心臓ではなく肩を貫いただけだった。