じれったいのよ。
ベッドのスプリングが、二人分の重さに抗議するように軋んでいる。
「あ、っや、…っ」
まとわりつく。渦を巻く。
二人を取り巻く空気が、重く、熱く、甘い。
「だめだ、…黒……っ」
快感が滲む抗議の声は、ことごとく口づけに吸い取られてしまう。
濡れた音が耳につく。
「や、あ、あぁ…っ」
口をふさぐ間も、唇を噛み締める余裕もない。耐えようとする唇から、それでも甘い声が零れ、すがりつくつもりはないのに、黒岩の背中に回された手に力が入る。
新しい快楽を覚えさせられた胸を大きな手が撫でて、雨池は震えて背中を反らせた。
全身に渦巻く熱が高まって、出口を探している。
朦朧とした表情の雨池が、おかしくなる、と悲鳴のように口にする。黒岩は、腰の辺りにわだかまる暗い欲望に顔を歪めた。
「ひ、あ…っ、あ…」
「───修司」
低く囁いた瞬間、びくびくと震えて雨池が白濁を吐き出した。
追いかけるように黒岩も達する。余韻に波打つ雨池の腹に、二人分の精が零れた。
「…くそ……」
小さく呟いて、はぁはぁと忙しく息をしながら雨池は目を瞑る。同じように荒い呼吸が、耳元からゆっくり離れる。
達した後の顔に黒岩の視線を感じて、雨池はうっすらと目を開けた。黒岩は目をすがめるように細めて、微笑を浮かべる。
「───収まりませんね」
言いながらまた、甘ったるいキスをするために顔を寄せる。
長い指が、まだ芯を残している雨池に絡みついて撫で上げた。ひくりと震えた雨池に、黒岩は低く囁く。
「…続けますか?」
雨池はほんの一瞬躊躇し、熾火(おきび)の残った広い背中に、かすかに爪を立てて、自ら口づけをねだった。