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CROSS 第7話 『動向』

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 特務艦の前を飛んでいたはずの戦闘機はいつのまにかいなくなっており、特務艦は単独で入港した。特務艦はドッグではなく、港に停めた。特務艦のまわりには、被害を受けている帝国連邦の艦艇がたくさんあった。どうやら修理ドッグへの順番待ちのための停泊のようだった。
 山口や佐世保たちが艦から降りて、港につながっている通路から基地の中へ出ると、目の前にある車の乗り入れ口に、司令部からの迎えの車が止まっていた。帝国連邦軍全体で使われているジープタイプの軍用車両だった。タイヤは無く、地面から少しだけ浮かんでいた。5人乗りで、後ろの荷台部分には重機関銃がついていた。車には運転席に一人だけ、司令部の兵士が乗っていた。
「乗るのは山口少佐だけですよ」
迎えの車に乗っていた兵士が、山口の後に続いて車に乗りこもうとしていた佐世保たちに言った。佐世保はムッとし、その兵士に何か言おうとしたが、山口にたしなめられた。
 山口は佐世保たちに、頼んでおいたことや出発の準備をしておくように言った。佐世保たちはやれやれといった感じで、山口から離れていった港に通じる通路に戻っていった。そして、山口を乗せた車は、司令部に向かって走り出した。

 車はほとんど音を出さずに走っていた。後部座席にいる山口は、基地の被害状況について、運転している兵士に質問した。
「ザフトの襲撃の後、今度は悪魔軍が襲撃してきましてね。外壁の損傷箇所から侵入してきやがったんですよ」
「でも、基地の中に被害の様子が無いが」
「侵入してきたのは少数でした。でも、ほら、あそこを見てください」
兵士が言う場所には、分断されている全自動モノレールの高架ラインがあった。破壊されて分断されている高架のその下には、小さなガレキの山ができていた……。分断されている高架ライン上には、コンピューター制御の全自動モノレール車両が立ち往生していた。前に山口が基地に来たときに乗った乗り物だった。
「こりゃひどいな。だから車で港まで迎えに来たのか」
「……いや、そういうわけではないんです」
「じゃあ、どういうわけ?」
「……その、今司令部に来ているお客さまが山口に、少しでも早く話したいことがあるからだそうです」
「……当ててみようか? そのお客様は、幻想共和国のレミリア・スカーレットさんだろ?」
そこでその兵士は、ごくりと息を飲んだ。
「ええ、そうです……。アバーナシー司令官まで少しおびえていましたよ……」
アバーナシー司令官とは、このあいだ、山口が司令部で話した女司令官のことである。
「あのタイラントも逃げ出すほどの鬼の女司令官が!?」
「ハハハッ、本当ですよ」
兵士が笑いながらそこまで言った時、山口と兵士は急な寒気に襲われたらしく、ブルルと体を震わせて黙りこんだ……。