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CROSS 第7話 『動向』

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 ――しばらくして、山口を乗せた車は司令部に到着した。司令部のエントランスの目の前にある車の乗り入れ口には、赤色が少し混じった黒塗りのリムジンが駐車してあった。そのリムジンの周辺には、幻想共和国と記されている服を着ている妖精の兵士たちが、蝶のような羽を動かしてうろついていた。
 山口の車は、そのリムジンから少し離れたところで停車した。
「それじゃ、ここで降ろしますね」
運転していた兵士は、タクシーの運ちゃんみたいな口調で山口に言った。
「ああ、ありがと」
山口はそう言うと車から降りた。車は司令部の裏手にある駐車場のほうへ走り去る。
 山口は車を見届けながら、司令部のエントランスへ通じる出入口へ歩いていった。出入口の近くには妖精兵がおり、周囲に目を配らせている。妖精兵たちは、彼の接近に気がついた途端、警戒し始めた。
 山口がエントランスを歩いていくのを妖精兵たちは黙って見届けたが、その場にいる妖精兵の主任らしき妖精がポケットから大きくて古くさいトランシーバーを取り出し、どこかと連絡を取っていた。

 エントランスも攻撃のせいで荒れており、工兵や業者が修繕作業に追われていた。
 そして、ここにも何人かの妖精兵がいた。彼らは山口を凝視していた。妖精兵たちに気にせず、彼はエントランスの中央にある受付に行った。そこには、前回司令部に来た彼の応対をした人と同じ女性がそこにいた。しかし、彼女はとても疲れているという表情をしていた。
「大丈夫か?」
「……山口に心配されなくても、私は大丈夫ですよ」
「ああ、そう。 それで司令官に会いたいんだけど。もちろん、アポは取ってある」
「わかっていますよ。司令部中があなたの到着を待っていましたよ」
うんざりとした口調で受付嬢は言った。
「ふーん、オレって人気者なんだな!」
その場を和ませようと山口は言った。受付嬢は大きくため息をついた。そして、彼女は周囲をチラリと見渡してから、
「今、貴賓室に幻想共和国のスカーレットさんがみえているんですが、その警備とかで妖精兵がいるんです」
「だから司令部のあちこちにいるのか」
「だけど、あの妖精たちは高慢でプライドが高くて、私たち人間とは話をしようとすらしないんです!」
受付嬢はイライラしながら言った。一番近くにいた妖精兵が何ごとかとこっちをチラリと見たが、すぐに視線を元に戻した。よく見ると、妖精兵たちを遠巻きに、人間の兵士たちが妖精兵たちを見張るように立っていた。