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CROSS 第7話 『動向』

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 そのとき、基地のほうから、すごいスピードで「何か」が飛んできた……。山口が、警戒体勢から戦闘体勢を取れと命令する前に、その何かは、フロントウィンドウの目の前で急上昇して特務艦の上を高速で通過していった。山口含むブリッジにいた全員が声を上げて驚いた。その何かは1つではなく2つだった。
「今のは戦闘機です!!! 幻想共和国軍の主力戦闘機『飛蝶』2機です!!! 現在、本艦の周囲を飛行しています!!!」
佐世保が目の前のコンピューターの画面を見ながら報告する。
「公聴会へ出席させるための出迎えかな?」
山口は苦笑いしながら言った。
「山口少佐!!! 戦闘機から無線で、自分たちの誘導に従って基地に入港しろとのことです!!!」
ウィルがヘッドセットのマイクを手で覆いながら言った。山口は舌打ちして、
「ガリア、誘導など無視していつも通り入港しろ」
山口は、同盟国だがヨソモノである幻想共和国軍の命令には従いたくない様子であった。
「山口少佐、これは帝国連邦軍からの命令でもあるということです!!!」
「クソ!!! ……しょうがない、奴らの誘導に従ってやれ」
「了解」
そのとき、特務艦の下を後ろから戦闘機が1機、もう1機の戦闘機が特務艦の上を前から、速度を緩めながら飛んでいった。
 その幻想共和国軍の戦闘機は、蝶のような形状をしていた。コクピットには羽を生やした妖精が2人ずつ乗っていた。そのコクピットのすぐ左右には、片側に2つずつ合計4つの魔弾連射砲が装備されていた。後部には推進エンジンが一つついていた。ただ、色合いのせいで、すごく派手な機体だった……。
 そして、戦闘機は2機とも特務艦の前に来て、基地へ誘導するように飛び始めた。

 やがて、特務艦は基地のすぐ近くまで来た。そこで山口たちは基地が損傷を受けていることに気づいた。幸い、致命的な損傷ではなく、基地の工兵たちがせっせっと補修していた。しかし、山口たちはそれよりも基地のまわりにいる艦に驚いていた。
 そこにいた艦は、ほとんどが幻想共和国軍の艦だった。速そうな駆逐艦と古風なデザインの巡洋艦が20隻ぐらいおり、大きな俎板級空母が1隻いた。そしてさらにとても大きな1隻の戦艦がおり、その戦艦を見て、山口は席から立ち上がって驚いていた……。
「どうして、あの戦艦がいるんだよ……」
「……山口さん、年貢の収めどきってやつですか?」
佐世保も驚きながら山口に言った。しかし、山口は、彼女の言葉が届かないほど呆然としていた……。

 その戦艦は、ほとんどが赤系の色で構成されていた。魔弾砲がたくさんついており、その戦艦の形状は、第二次世界大戦までにあった戦艦によく似ていた。ただ、中央にそびえ立つ艦橋部分の建造物は、まるで洋館のようで、戦争には場違いなしゃれた洋風の窓に、ブリッジがあると思われるフロントウィンドウの上には古風なアナログ時計がついていた。
「スカーレットさんの戦艦『紅緋』がいるということは、基地に相当の用件があるということでしょうね」
ヘーゲルがこんなときでも冷静に言う。
「そんなことはわかってるよ!」
山口は頭を抱えながら怒鳴った。
「……山口少佐、あの戦艦から無線通信です。ただちに基地に入港し、山口は司令部に出頭するようにとのことです」
ウィルがおそるおそる山口に報告した。
「わかったと伝えろ」
山口はあきらめた表情でウィルに伝えた。
「了解」
「……ガリア、入港しろ」
「了解です」
「ああそうだ、ウィル。スカーレットさんからの伝言とかは無いのか?」
「伝言らしき事は言っていませんでしたが……」
「ああそうか……」