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CROSS 第7話 『動向』

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 報告を聞き終えた山口は、ブリッジに備え付けられている『ドリンクメーカー』から、ブランデー入りの紅茶を手にした。そして、自分の席である指揮官席に座る。
「基地に到着するのは1時間後です」
これはガリアだ。
「そうか。ウィル、司令官にアポを取っておいてくれ。このあいだは忘れていたから」
「了解です」
こちらはウィルだ。
山口たちを乗せた特務艦は、異次元空間をワープ航行で進んでいた。ブリッジの正面にあるフロントウィンドウには白く輝く空間が流れていた。

「山口少佐、いつもの新聞が送られてきました。今読みますか?」
ウィルが振り向いて尋ねる。
「もちろん」
ブリッジの天井に吊り下がっている大型画面に、『データ受信中』の文字が点滅し始める。新聞のデータを受信しているのだ。

 少しすると、ウィルのコンピューターの横にある印刷機のような機械から、新聞が1つまるごと出てきた。まるで駅にある新聞の自動販売機のようだ。
 ウィルはその新聞を手に取ると、山口にトスする。彼はそれをキャッチすると、指揮官席で読み始めた。ブリッジには、コンピューター音と新聞の紙の音だけが静かに流れていた。

 山口が読んでるその新聞は、『文々。新聞』という幻想共和国の新聞だった。検閲を受けずに真実のみを伝えるので異次元中で人気がある。情報統制をしたがる大日本帝国連邦は毛嫌いしているが、同盟国の新聞なので黙認状態だ。発行部数は異次元一と言われ、山口たちの758号世界にも進出している。

 その回の新聞の一面の見出しは、帝国連邦軍と悪魔連合軍(デモナータ軍もここに所属している)の戦争についてだった。最近の一面はこの話題ばかりだ。今回は、『デモンズソウル』の世界に進軍していた帝国連邦軍が悪魔連合軍の強い反攻にあったことについてだった。記事のすぐ横に掲載してある動く写真には、ドラゴンが炎を吐きながら飛び回っている様子が映っていた。
「悪魔との戦争が激化しているらしいけど、オレたちはあれから一度も悪魔と遭遇してないなぁ」
「そうですね。あの異次元ステーションが最後です」
山口のすぐ後ろの管制席に座っているヘーゲルが、彼のつぶやきに反応した。
 彼は次に、某氷の妖精が主人公の4コマ漫画に目を通す。少し笑った後、新聞に挟みこまれていたチラシも見始める。幻想共和国の魔法店などのチラシだった。
「おい、新しい魔法書が入荷したらしいぞ。また買いに行こう」
「無駄使いはやめてください」
ヘーゲルが静かに諭す。山口はムッとしたが、気にせずに新聞を再び読み始めた。