蜃気楼に恋をした。
彼のすべてが好きかと問われれば、答えはノーだ。
いくら恋い慕う相手といえど私はそこまで盲目的ではないし、彼もまた、不良と呼ぶには程遠いが善良と呼ぶには難しい人種である。
類似点より相違点の方が多い。
合わない箇所をあげられても、合う箇所はなかなかあげられない。
現に、彼にそれはどうなんだと疑念を抱くことは多々あれど、ときめきを覚える事はわずかしかない。
けれど、それは私が彼を好きでいることの障害にはならない。
良い所しかない人間などいない。悪い所しかない人間もいない。
清濁併せ持っての人間なのだから。
だから。
彼のすべてが愛しいかと問われれば、答えはイエスだ。
<思考回路の鉄板焼きメビウス風味>
(裏も表もありはしない。そのすべてが彼なのだから)