小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

蜃気楼に恋をした。

INDEX|6ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 


私が彼を好きになったのは、彼のそれに指先を掠めたときだった。と思う。
というのも、明確な時期など私にはわからないからだ。
ちなみに、それ、というのもわからない。わからないが、確かにあのとき私は彼のそれに触れたのだ。
彼のそれに触れたとき、私の空洞じみた胸部がひどく痛んだことだけは、はっきりと覚えているのだけれど。

いつの間にか好きになっていた。相手がいる彼を。
いつの間にか好きになってしまっていた。相手がいるのに、彼を。

彼の隣は、永遠に私のものにはならないのに、好きになってしまっていた。
私は馬鹿だ。どうせなら気付かないままでいれば良かったのに。
そうすれば、行き過ぎた友情ですませられた想いだったのに。
でも、もう気付いてしまったのだ。今更悔いたところでどうにもならない。
馬鹿な私は、指先が彼のそれを掠めたときの感触と色合いを、そして痛みを思い出して、彼を想って日々を過ごしていくしかないのだ。
ああ、なんて絶望。そして幸福。
彼の手が私の手をとることなどないと知っているのに、私の脳内は彼の笑顔を反芻してしまうのだ。
けれど、それでいいのかもしれない。
私が彼を好きなだけなのだから。


<一方通行続行>
(こればかりはどうしようもない。どうにもしたくない)

作品名:蜃気楼に恋をした。 作家名:泡沫