蜃気楼に恋をした。
本当は、いつだって守ってもらいたかった。
ご都合主義なハッピーエンドだと皮肉りながらも、御伽噺のお姫様に憧れを抱いていたのは事実だ。
ただ、望んでいたのは誰にでも優しい王子様なんかではなく、やんちゃな俺様野郎や自分勝手に振り回してくれるような意志の強い相手だったのだけれど。
だからこそ、自分がどれだけ愚かで弱いのか自覚していた私にとって、彼はありえない人だった。
妙に儚くて脆いくせに、なまじ強いから手に負えない。
甘えたくなり、頼りたくなり、寄りかかりたくなる。
彼がそれによってどれだけ壊れていくのかなんて知らないままで。その笑顔の裏にどれだけの痛みを抱えているか知ろうともしないままで。
それに気づいた時、私が彼を守りたいと思ったのは自然なことだったのかもしれない。
私は愚かで弱いけれど、儚くも脆くも、ましてや強くもないから。
踏み台でも繋ぎでも構わない。
彼のひとときの、否、刹那や瞬きでもいい。彼の安息になりえる瞬間がたった一度でもあるのなら、私は彼のそばにいたい。あの細い体躯を抱きしめて、ひたすらに頭を撫でていたい。
そうして、彼がもし、ほんの一ミクロンでも安堵してくれたのなら、私の存在価値はそれだけで十分だ。
ああ、そうだ。結局すべては私のエゴなのだ。
けれど、私如きのエゴで彼の幸せをほんの少しでも手助けできるのなら、エゴだって悪くないと思うのだ。
全ては私の理想で夢だけれど、もしも彼がそれを叶えてくれたなら、許してくれるのなら、私はそうしたいと思う。
<君色エゴイズム>
(空想を夢想する)