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蜃気楼に恋をした。

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彼をはじめて見たとき、何かを感じた。
けれど、それは色恋なんて甘ったるいものではなくて、「この人はたぶん普通じゃない」という失礼極まりないものだった。
彼はかなりうまく周囲の空気にとけこみ、同じ雰囲気を纏っていたけれど、幸か不幸かその違和感を感じとった私は、なんとなく彼に目を向けるようになっていた。
彼は思ったよりよく笑う明るい人だった。お調子者の様なスタンスを、的確にわざとらしく、けれど自然とつかみ取り、クラスの雰囲気を陰から支えていた。少なくとも、私にはそう見えた。
でも、時折尋常でない何かが垣間見えることもあって、私はそれを怖いと思うと同時、とても素敵だとも思った。
果たして、どちらが彼なのか。それとも、どちらも彼なのか。非常に気になったものだ。
だからといって私は自ら接触を図ったり積極的に話しかけるようなことはせず、彼も彼で私との接点などどうでもいいらしくごくごく普通にクラスメートとして季節を一つ過ごしたのだけれど。

ああ、今考えると、芽ははじめから出ていたのかもしれない。
育つのにずいぶん時間がかかったなあなんて考えながら、私は読んでいた文庫本を閉じた。

作品名:蜃気楼に恋をした。 作家名:泡沫