蜃気楼に恋をした。
思うに、幸福と絶望はある意味では同じなのだ。
似たような影響力を持ち、似たように感情を刺激し、似たように人を弱く、あるいは強くする。
異質なはずの二つが、奇妙なまでにそっくりな波形を描いて心に響く。
全く同じではない、けれど違うとは言い難いあれらに触れたとき、私はそう思わずにはいられなかった。
彼が好きだ。彼を好きになれたことは幸福だ。
彼が好きだ。彼を好きになれたことは絶望だ。
私に向けられる笑顔に眩い幸福を覚え、同じ顔をして他の誰かに微笑む彼に昏い絶望を抱く。
それを嫉妬と呼ぶか乙女心と呼ぶか、感情を名称に置き換えることなど、所詮はただそれだけの違いでしかない。
虹のかかった空に微笑む日もあれば、恨みがましい眼差しを向けることもあるだろう。
そんなものだ。
<名称置換>
(それをなんと呼ぼうと、想いの形は同じなのだ)