蜃気楼に恋をした。
適度に濁ったその眼差しが好きよ。
なんて、知ったかぶりもほどほどにするべきだろう。
それでもそう思わずにいられないのは、私が彼を、琥珀色の歌声と煮詰めた砂糖のような声を持つ彼を、原色を淡くとかしたかと思えばパステルカラーをくもらせてしまう彼を、なんの間違いか好きになってしまったからに違いない。
ああ、なんて幸福。そして絶望。
浮きあがった瞬間に叩き落とされるようなこの感情は、きっと私を駄目にするだろう。
けれど、それでいいのだ。
だって、私は彼が好きなのだから。
<一方通行>
(進行方向が闇でも進むしかないのだ)