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蜃気楼に恋をした。

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ああ、やっとわかった。

彼は蜃気楼なのだ。
そう考えれば、遠いのか近いのかわからなかったのも納得がいく。辻褄があう。
彼は、蜃気楼なのだ。
彼は彼自身を「近いけど掴めない」と称したけれど、それは違う。
だって、いつだって遠くて見えるか見えないかギリギリのところにいるかと思えば、触れられるほど近くにいてくれていたりもして、その距離感は常にまちまちだった。
けれどそれは、「高嶺の花」とも「憧れの君」とも、ましてや彼の言う「近いけど掴めない」でもなかった。当然といえば当然だ。彼は蜃気楼だったのだから。
蜃気楼。ずっと遠くにあるものがすぐそこにあるように見える現象。
要するに、彼が近くにいるなんていうのは、私の都合のいい妄想ではなくて、彼がそう見せているだけだったのだ。
彼が意図的に、もしくは無意識に調整した距離を、私が彼が故意に移動していると思い込んでいただけ。
なんのことはない、とんだ茶番だ。
彼は結局ただそこにいるだけで、私は私でここにいるだけなのだ。
そして、そんな彼のことを、私は、

掴むことのできない蜃気楼は、私とつかず離れずの距離でいるだろう。
これからも、きっとずっとそのまま。
あわよくば近づきたいけれど、どうか離れないでくれと願うばかりだ。
願わくば、触れられますよう。抱きしめられますよう。愛していられますよう。


<蜃気楼に恋をした。>
(きみがすきです)

作品名:蜃気楼に恋をした。 作家名:泡沫