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蜃気楼に恋をした。

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とうとうこの日がやってきた。いや、私が言いだしたんだけど。

もうすぐ一年が終わり、学年が変わる。そろそろ頃合いだ。
そう思った私は、彼に話があるから残っててと伝えた。
いつもの調子で承諾した彼は、けれど目を合わせない。その態度は、まるで何もかもを見透かしているかのようで、私は早々に心が折れそうだった。
とういうか、もはや折れていた。べきんべきんだ。一体どう修復しろというのか。
そんな逆恨みにも近い思いを抱きながら、私は話の場を設けた自分とやってくる放課後を恨みながら迎えたのだった。

今日はお別れ会だった。
先生とクラスメートとの、お別れ会。
私はクラスメート一人ずつに言葉をかけた。彼だけを除いて。
茶化すように彼をとばしたから周りはそうでもなかったけれど、彼は一人きょとんと…というかあれぇ?という顔をしていて、それが少し可愛かった。
本当は、あの場で一言言って終わるつもりだった。というか、そもそも彼には何も言わないつもりだった。私の推測では、彼は来ないはずだったのだから。美人で聡明な彼女さんと、他県でいちゃついている予定だったのだから。
でも、彼は来てしまった。そして私は言ってしまった。話がある、だなんて言ってしまったのだ。
言わなければよかった。伝えた所で何も変わらないのに。
そもそも、私はいい加減彼を諦めたくて、彼じゃない人に目を向けて、諸事情で泣いていた彼にそれを伝えたばかりだったのに。
ずっと好きだったよ。でももう好きじゃないから。これからもよろしくね。
そんな簡素な言葉で自分を納得させたつもりだったのに。
なのに、目は勝手に彼を追い、耳は当然のように彼の声を探り、挙句、心は彼が好きだと泣くのだ。こればかりは私もお手上げである。どうしようもない。
好きなのだ。彼が。どうしようもなく、彼が。

好きなの。


<現実回帰>
(覚悟なんてとうに出来てる。だけど、)

作品名:蜃気楼に恋をした。 作家名:泡沫